鯖折り(さばおり)とは、外側から相手の腰の両まわしを引きつけ、上からのしかかるようにして腰を下につぶし、膝をつかせて勝つ相撲の決まり手です。日本相撲協会が定める決まり手八十二手のうち、ひねって崩す技を集めた「捻り手」19手の1つです。協会の集計では、平成25年1月場所から令和8年9月場所14日目までの192,560番のうち8回・68位で、8番とも幕下以下の取組でした。相撲レファレンスの記録を当サイトが数えたところ、幕内では2001年5月場所の旭天鵬-海鵬が最後です。受けた側の負担が大きい技として小中学生の大会では禁じ技ですが、大相撲では反則ではありません。
この記事でわかること
- 鯖折りの公式の定義と、「引きつける・のしかかる・膝をつかせる」の3コマ図
- 192,560番のうち8回という数字の中身と、8番すべての取組
- 幕内では1927年以降105番、関取の取組は2001年が最後という記録
- 寄り倒し・浴びせ倒し・極め出し・吊り出しとの違いの表と見分け図
- 危ないと言われる理由と、1986年の北尾-小錦の一番、大相撲と子どもの大会での扱いの違い
- 名前の由来と、魚の締め方・プロレスのベアハッグとの関係で、辞典が書いていること・書いていないこと
鯖折りとは|両まわしを引きつけ、上からのしかかって膝をつかせる捻り手
相撲の鯖折りとは、相手の両まわしを外側から引きつけ、上からのしかかって腰をつぶし、膝をつかせる決まり手です。
日本相撲協会の公式サイトは、鯖折りを次のように説明しています。
外側から相手の腰を両まわしか両手で引きつけて、上からのしかかるようにして相手の腰を下につぶしてひざをつかせて勝ちます!
協会の説明は「引きつける」「のしかかる」「ひざをつかせる」でできている
協会の説明文は、外側から両まわしを引きつける、上からのしかかる、腰をつぶして膝をつかせる、の3段でできています。
協会のこども向けページの解説画像では、同じ技を「相手の腰の両まわし又は体を両手で強く自分の方に引き付けながら、相手にのしかかるように押さえつけ腰を潰して膝をつかせて勝ちます。」と書いています(出典:日本相撲協会「ハッキヨイ!せきトリくん おしえて八十二手」)。大人向けの詳細ページと比べると、「強く自分の方に」「押さえつけ」が加わり、「外側から」「上から」の語がありません。同じページのイラストには、擬音の「グキッ」と「力の方向」を示す矢印が描かれています。
「3段」は協会の説明文を当サイトが区切ったもので、協会の判定基準ではありません。決まり手の名前を最終的に決めるのは審判部です。
捻り手19手の12番目で、分類は寄りでも投げでもない
鯖折りは協会の一覧で捻り手19手の12番目に並び、回数は捻り手のなかで17番目の8回です。
82手は基本技7・投げ手13・掛け手18・反り手6・捻り手19・特殊技19の6系統です(一覧の並びを当サイトで数えたもの)。鯖折りは寄りや押しを集めた基本技でも、投げ手でもなく、捻り手に入っています。同じ捻り手には肩透かしや内無双があります。決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】にまとめています。
| 回数の順 | 捻り手の技名 | 全体の順位 | 回数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 突き落とし | 4位 | 10,484 |
| 2 | 肩すかし | 15位 | 1,786 |
| 3 | とったり | 24位 | 379 |
| 4〜6 | 下手捻り・上手捻り・腕捻り | 26位・32位・37位 | 363・268・143 |
| 7〜11 | 巻き落とし・網打ち・波離間投げ・内無双・頭捻り | 38位〜47位 | 119〜61 |
| 12〜16 | 徳利投げ・首捻り・逆取ったり・小手捻り・大逆手 | 49位〜60位 | 50〜20 |
| 17 | 鯖折り | 68位 | 8 |
| 18・19 | 合掌捻り・外無双 | 79位・87位 | 2・0 |
協会は82手に通し番号を振っていません。こども向けページの「捻り手⑫」は、系統のなかでの並び順です。
辞典は「腰挫き」とも呼び、あごを相手の肩に当てると書く
国語辞典と百科事典は、あごを相手の肩に当てて引き、腰をくじいて膝をつかせる技と説明しています。
デジタル大辞泉は、相手のまわしを引きつけ、上背を利かせて上からのしかかるように下半身を攻め、ひざをつかせる技とし、別名を「腰挫(こしくじ)き」としています。ブリタニカ国際大百科事典は、両まわし(両上手が本格)を引きつけ、顎を相手の肩にあて、前へつぶすように引いて両膝あるいは片膝をつかせる技と書きます。精選版日本国語大辞典は、両手で相手の腰を強く引きつけ、あごを相手の肩にあて、上背と体重を利かせて強く引き、腰をくじきおとす技としています(いずれもコトバンク所収:デジタル大辞泉・ブリタニカ・精選版日本国語大辞典)。
協会の説明文に「あご」は出てきませんが、辞典3種のうち2つがあごを肩に当てる動作を書いています。精選版日本国語大辞典が相撲の意味の出典に挙げるのは『相撲講話』(1919年)です。
鯖折りはどれくらい出るのか|192,560番のうち8回・68位
協会の集計では平成25年1月場所から令和8年9月場所14日目までの192,560番で8回、68位です。
最も多い寄り切りは同じ期間に47,975回で、鯖折りはその約6,000分の1です。鯖折りの1つ上の67位はたすき反り(12回)、1つ下の69位は送り吊り落とし(7回)でした(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手」)。192,560番を8で割ると、およそ24,000番に1番の計算です。
割合の表示は、協会の一覧ページが「0%」、鯖折りの詳細ページが「0.01%」で、ページによって違います。回数と順位はどちらも8回・68位です。
協会が並べる8番は、すべて幕下以下の取組
協会の詳細ページは鯖折りの8番を1番ずつ並べており、勝った力士の地位は8番とも幕下以下です。
ほかの決まり手の詳細ページは「〜の多い力士」を5人ほど挙げる形ですが、鯖折りのページは「鯖折りで勝った力士」として、期間中の全8番を取組日つきで載せています。
| 取組 | 勝った力士(当時の地位) | 相手 | 協会の現在の表示 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月場所4日目 | 竜鳳(東幕下17枚目) | 阿蘇ノ山(東幕下15枚目) | 東幕下4枚目 竜鳳 |
| 2024年3月場所7日目 | 錦乃竜(西三段目69枚目) | 庄司(西三段目70枚目) | 西三段目66枚目 白蛇 |
| 2023年1月場所4日目 | 奄美岳(東序二段87枚目) | 名島(東序二段86枚目) | 元三段目85枚目(令和8年1月場所引退) |
| 2017年9月場所10日目 | 今野(東序二段88枚目) | 小野(西序二段85枚目) | 元序二段4枚目 佐田剛(令和4年1月場所引退) |
| 2014年3月場所4日目 | 湊竜(東序二段62枚目) | 安井(東序二段63枚目) | 西三段目40枚目 鷹翔 |
| 2013年7月場所3日目 | 谷川山(西序ノ口11枚目) | 藤の谷(東序ノ口10枚目) | 元三段目93枚目 黒熊(令和6年3月場所引退) |
| 2013年5月場所12日目 | 克乃富士(西三段目2枚目) | 靍林(東幕下60枚目) | 西序二段13枚目 克乃富士 |
| 2013年1月場所初日 | 大瀬海(東三段目97枚目) | 津軽海(西三段目97枚目) | 元三段目30枚目(平成27年3月場所引退) |
勝った時の地位は幕下1・三段目3・序二段3・序ノ口1で、8人とも別の力士です。協会は192,560番の階級を書いていませんが、当サイトが相撲レファレンスで全階級の同じ期間を数えると鯖折りは8番で、力士・場所・日目まで協会の8番と一致しました。協会の数字は全階級の数と読めます。
幕内では1927年以降105番、1950年代に51番
相撲レファレンスの幕内の記録を当サイトが数えると、1927年以降の鯖折りは105番で、1950年代の51番が最多です。
| 年代 | 幕内の本数 | 年代 | 幕内の本数 |
|---|---|---|---|
| 1920年代(1927年〜) | 4 | 1970年代 | 3 |
| 1930年代 | 8 | 1980年代 | 3 |
| 1940年代 | 17 | 1990年代 | 3 |
| 1950年代 | 51 | 2000年代 | 1 |
| 1960年代 | 15 | 2010年代・2020年代 | 0 |
| ― | ― | 合計 | 105 |
幕内で鯖折りが出た場所は71場所で、1場所の最多は1947年11月場所の5番、1年の最多は1955年の10番です。記録に残る最も古い幕内の鯖折りは、1927年1月場所6日目に清瀬川が外ヶ濱を破った一番でした。1927年以降の全階級(相撲レファレンスに記録のある取組)の合計は145番で、内訳は幕内105・十両15・序二段12・三段目7・序ノ口4・幕下2です。
関取の取組では2001年5月の旭天鵬-海鵬が最後
幕内の最後は2001年5月場所4日目の旭天鵬-海鵬、十両の最後は1990年5月場所9日目の高望山-貴ノ嶺です。
時事通信の写真特集「珍しい決まり手」は、身長190センチの旭天鵬が2001年夏場所4日目に海鵬を破った一番を、幕内で鯖折りが決まった最後の例として紹介しています(出典:時事通信)。相撲レファレンスでも、この一番は2001年5月16日、西前頭7枚目の旭天鵬が東前頭6枚目の海鵬に勝った記録として残っています。旭天鵬は1999年5月場所14日目にも大日ノ出を鯖折りで破っており、その前の幕内は1999年1月場所13日目の栃乃和歌-出羽嵐です。
2001年6月以降、十両以上の取組で鯖折りが決まった記録は、相撲レファレンスにも報道にも見つかりません。のちに幕内へ上がる荒鷲が、三段目だった2004年3月場所9日目に鯖折りで勝った一番はあります。
鯖折りと寄り倒し・浴びせ倒し・極め出し・吊り出しの違い|膝をつかせて勝つか
協会の説明で比べると、膝をつかせて勝つと書くのは鯖折りだけで、ほかは倒すか土俵の外へ出す技です。
| 技名 | 系統 | 協会の説明の要点 | 勝ちの形 | 順位・回数 |
|---|---|---|---|---|
| 鯖折り | 捻り手 | 外側から両まわしを引きつけ、上からのしかかって腰を下につぶす | ひざをつかせる | 68位・8回 |
| 寄り切り | 基本技 | 体を密着させて前か横に進む | 土俵の外に出す | 2位・47,975回 |
| 寄り倒し | 基本技 | 体を密着させて寄り、そのまま体を預ける | 倒す | 5位・9,263回 |
| 押し倒し | 基本技 | 両手か片手を筈にして押す | 倒す | 8位・6,607回 |
| 浴びせ倒し | 基本技 | 反ったり腰がくだけたりした相手に全体重をのしかかるように預ける | つぶすように倒す | 21位・459回 |
| 極め出し | 特殊技 | 差し手・首・肩の関節を極めて動きを封じる | 土俵の外に出す | 17位・800回 |
| 極め倒し | 特殊技 | 差し手を両腕で抱え込み、関節をしめつけながら横に振る | 倒す | 33位・236回 |
| 吊り出し | 特殊技 | 両まわしを引きつけ、腰を入れて正面から吊り上げる | 土俵の外に出す | 31位・270回 |
寄り倒し・浴びせ倒しは相手を倒し、鯖折りは膝をつかせる
寄り倒しと浴びせ倒しは相手の体を倒して勝つ技で、鯖折りは相手の膝を土俵につかせて勝つ技です。
寄り倒しの公式の説明は「相手に体を密着させて前に寄って出ます。」「そして体を密着させたまま、相手に体を預け、倒して勝つことを言います!」です(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 寄り倒し」)。浴びせ倒しは、相手が体を弓なりに反らしたり腰がくだけたりしたときに、全体重を相手に「のしかかるように」預け、「つぶすように」倒す技です(出典:日本相撲協会「浴びせ倒し」)。
「のしかかる」「つぶす」の語は鯖折りと浴びせ倒しに共通します。協会の説明で分かれるのは結びで、浴びせ倒しは「倒して」、鯖折りは「ひざをつかせて」です。当サイトの読み解きでは、鯖折りは相手を引きつけたまま真下へつぶすので、相手は後ろへ倒れる前に膝が落ちます。寄る技の詳しい違いは寄り倒し、押す技は押し倒しの記事にまとめています。
極め出し・極め倒しは関節を極め、吊り出しは持ち上げる
極め出し・極め倒しは相手の腕の関節を極め、吊り出しは両まわしで相手を吊り上げる点が鯖折りと違います。
極め出しの公式の説明は「相手の差し手、首、肩の関節を極めて動きを封じ、そのまま土俵外に出して勝ちます。」で、両腕の関節を締め付けることを「閂(かんぬき)」とも呼ぶと添えています(出典:日本相撲協会「極め出し」)。極め倒しは、差し手を両腕で抱え込んで関節をしめつけ、横に振り倒す技です(出典:日本相撲協会「極め倒し」)。鯖折りが持つのは相手の腰のまわしで、腕の関節ではありません。
吊り出しの説明は「両まわしを引きつけ、腰を入れて相手の正面から体を吊り上げて土俵外へ出して勝ちます。」です(出典:日本相撲協会「吊り出し」)。「両まわし」「引きつけ」は鯖折りと同じ語ですが、吊り出しは上へ持ち上げ、鯖折りは上から下へつぶします。力の向きが逆です。
鯖折りはなぜ危ないと言われるのか|受けた側の膝と腰に体重が乗る
時事通信は「技を受けた側に大きな負担」がある技と書き、当サイトは上からの体重が膝と腰に乗るためと読みます。
時事通信の写真特集は、上手を引き付ける腕の長さと腕力、詰めの圧力が要るため「大型力士ならではの決まり手」だとし、技を受けた側の負担が大きいことを伝えています(出典:時事通信)。
以下は協会と辞典の説明を当サイトが読み解いたものです。鯖折りでは、受ける側は両まわしを引きつけられて後ろへ逃げられず、上から相手の体重を預けられ、腰を下へつぶされます。精選版日本国語大辞典が「上背と体重を利かせて」と書くとおり、仕掛ける側の体重が、曲がっていく相手の膝と腰に上から乗る形です。日本相撲協会の大相撲クイズ(No.1134・2025年2月15日)も、鯖折りを「この技で敗れると腰やひざなどを痛めやすく、ケガを誘発する技としても知られています」と説明しています(出典:日本相撲協会「大相撲クイズ No.1134」)。
1986年夏場所、小錦は北尾の鯖折りで右膝に重傷を負った
1986年5月場所8日目、関脇小錦は大関北尾に取り直しの一番で鯖折りで敗れ、右膝に重傷を負いました。
時事通信の写真解説によると、北尾は約2メートルの上背で約150キロの体重をかけ、約230キロの自分の重さも加わった小錦の右膝は耐え切れませんでした。小錦は「バーンという音がした」と話しています(出典:時事通信)。時事通信の2009年のコラムも、関脇で迎えたこの場所の北尾戦で「右ひざに負った重傷」が小錦の運命を大きく変えたと書いています(出典:時事通信「巨漢の系譜」)。
相撲レファレンスにも、1986年5月場所8日目「東大関 北尾○西関脇 小錦」の決まり手は鯖折りと記録されています。北尾はのちに横綱双羽黒になりました(横綱とは)。Wikipediaは小錦のけがを「骨折」、2人の体重の合計を400キロ以上と書いていますが、時事通信の2本は「重傷」までで、当サイトは骨折を確認できていません。
1926年の出羽ヶ嶽と太刀光の一番は、Wikipediaが伝える話
Wikipediaは、1926年5月場所に出羽ヶ嶽が大関太刀光を鯖折りで破って負傷させ、引退の原因になったと書きます。
この一番について、当サイトは報道や一次資料を見つけられていません。相撲レファレンスの決まり手の記録は1927年1月場所からで、1926年の取組は照合できません。出羽ヶ嶽は、1927年以降の幕内の記録でも鯖折りの勝ちが8番あり、大起に次ぐ2位です(出典:Wikipedia「鯖折り」)。
大相撲では反則ではなく、協会の禁じ手8項目に入っていない
鯖折りは協会の決まり手八十二手の1つで、協会が挙げる禁じ手8項目のどれにも当たりません。
協会のこども向けページが「禁じ手反則」として挙げるのは、握り拳で殴る、頭髪をつかむ、目または水月等の急所を突く、両耳を同時に両方の掌で張る、前縦褌をつかむ・横から指を入れて引く、のどをつかむ、胸・腹をける、指を持って折り返す、の8つです(出典:日本相撲協会「ハッキヨイ!せきトリくん おしえて八十二手」)。鯖折りはこの8項目に入らず、同じページで捻り手の12番目として紹介されています。大相撲の仕組み全体は大相撲の仕組みで解説しています。
小中学生の相撲では鯖折りは禁じ技|わんぱく相撲・中学生の大会
わんぱく相撲や中学生の大会では、鯖折りは反り技や河津掛けなどと並んで禁じ技とされています。
大相撲とアマチュア相撲では、使ってよい技の範囲が違います。大会の種類とプロ・アマの違いは相撲の大会とはにまとめています。
時事と週刊ポストが、子どもの大会での禁止を伝えている
時事通信は「わんぱく相撲では禁じ手」と書き、週刊ポストは中学生の大会の禁じ技に鯖折りを挙げています。
時事通信の写真特集は、鯖折りを技を受けた側の負担が大きい技とし、わんぱく相撲では禁じ手だと書いています(出典:時事通信)。週刊ポスト(2020年3月13日)は、中学生の大会は日本相撲連盟の規程に準じ、反り技・かわずがけ・さば折り・かんぬきなどを禁じ技にしていると伝えています(出典:NEWSポストセブン)。
反則の扱いはWikipediaが規程集を出典に書く
Wikipediaは日本相撲連盟の規程集を出典に、1度目は取り直し、2度目で負けになると書いています。
Wikipediaは、腰や膝に大きな負担がかかるため小・中学生などのアマチュア相撲では禁じ技とし、日本相撲連盟『規程集』(2021年)の審判規程補則を出典に挙げています(出典:Wikipedia「鯖折り」)。当サイトは規程集の原文を確認できていないため、取り直しと負けの扱いはWikipediaの記述として紹介するにとどめます。
鯖折りの使い手|大起・出羽ヶ嶽から旭天鵬まで
相撲レファレンスの幕内の記録では大起が28番で最多、出羽ヶ嶽8番、相模川6番、不動岩5番が続きます。
| 順 | 力士 | 最高位 | 幕内での鯖折りの勝ち |
|---|---|---|---|
| 1 | 大起 | 小結 | 28 |
| 2 | 出羽ヶ嶽 | 関脇 | 8 |
| 3 | 相模川 | 関脇 | 6 |
| 4 | 不動岩 | 関脇 | 5 |
| 5 | 若秩父 | 関脇 | 3 |
| 6 | 柏戸・旭天鵬・羽嶋山 | 横綱・関脇・関脇 | 各2 |
| 6 | 冨士錦・豊國・若瀬川・大瀬川・義ノ花 | 小結・小結・小結・前頭・前頭 | 各2 |
Wikipediaは使い手として、巨漢の関脇出羽ヶ嶽と小結大起を挙げ、平成以降の幕内では旭天鵬の2回を挙げています(出典:Wikipedia「鯖折り」)。
幕内の記録では大起が28番で最多、小柄な若秩父も決めている
大起の28番は幕内の鯖折り105番の27%にあたり、1949年から1957年に集中しています。
大起の28番のうち2番は、当時のしこ名「穗波山」の時代の勝ちです。1955年3月場所には小結として3番を鯖折りで勝ち、うち1番は大関三根山からでした。横綱では柏戸が2番、照國・東富士・鏡里・初代若乃花が各1番、大関では安藝ノ海・佐賀ノ花・朝汐・豊山・三重ノ海・北尾が各1番を記録しています。
Wikipediaは、鯖折りを身長の高い力士の技としながら、若秩父・若浪・若二瀬のような小柄な力士が怪力で決めることもあったと書いています。相撲レファレンスで数えると、若秩父は幕内で3番、若浪は1970年9月場所9日目に若二瀬を破った幕内の1番、若二瀬は十両で4番(1974年に集中)でした。
最近の鯖折りは2026年7月、幕下の竜鳳
全階級で最も新しい鯖折りは、2026年7月場所4日目に東幕下17枚目の竜鳳が阿蘇ノ山を破った一番です。
名古屋場所(IGアリーナ)4日目は2026年7月15日で、協会の詳細ページの「鯖折りで勝った力士」の先頭にこの一番が載っています。竜鳳は令和8年9月場所の番付で東幕下4枚目です。同じ日の幕内では、横綱大の里が豪ノ山に敗れています(名古屋場所4日目の記事)。その前の鯖折りは2024年3月場所7日目、三段目の錦乃竜(現・白蛇)が庄司を破った一番で、間は約2年あいています。
「鯖折り」という名前の由来と、魚の締め方・ベアハッグ
「鯖折り」の名は魚の締め方に由来するとWikipediaは書きますが、国語辞典3種は由来を書いていません。
「鯖折り」で検索すると、相撲の技のほか、釣った鯖の締め方やプロレス技、格闘ゲームの技の話も出てきます。
由来は鯖の首を折る締め方とされるが、辞典は書いていない
Wikipediaは、技を受けた力士が首を折られた鯖のような姿になることから名が付いたとされる、と書きます。
Wikipediaは、鯖は傷みやすいため釣り上げたその場で首を折って締めた、と説明を添えていますが、この段落に出典の注はありません(出典:Wikipedia「鯖折り」)。デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典・ブリタニカ国際大百科事典は、どれも名前の由来を書いていません。釣りの解説記事は、釣ったサバの首を折って血抜きする締め方を「サバ折り」「さば折り」と呼んでいます(出典:TSURI HACK・FISHING JAPAN)。
当サイトは、Wikipediaは魚の締め方を由来とし、辞典は由来を明記していない、の2つを並べて示し、断定はしません。締め方の手順は釣りの記事に任せます。
プロレスのベアハッグとは別の技
日国はレスリングの鯖折りを相撲と別の語義に立て、Wikipediaもベアハッグとの違いを書いています。
精選版日本国語大辞典は第2の語義として、レスリングで相手の胴を両腕ではさみ、引きつけながら左右にひねり倒す技を挙げ、「相撲のようにまっすぐ引くことはできない」と相撲との違いを書いています(出典:精選版日本国語大辞典「鯖折」)。Wikipediaの「ベアハッグ」は、見た目が似ているため鯖折りと呼ばれることもあり、プロレスでは「熊式鯖折り」とも言うとし、「鯖折り」の項は上から圧迫しなくても成立する点を違いに挙げています(出典:Wikipedia「ベアハッグ」)。
相撲の鯖折りは膝をつかせて勝ちが決まる技で、胴を締め続けて降参させる技ではありません。デジタル大辞泉の「ベアハッグ」は、鯖折りとの関係を書いていません。
古い名は「腰挫き」、英語では forward force down
辞典とWikipediaは古い名を「腰挫き(こしくじき)」とし、英語では forward force down と訳されます。
Wikipediaは、出羽海『最近相撲図解』(1918年)が「腰挫き」の項で俗に「鯖折り」とも言うと書いていることを引いています。当サイトはこの原本を確認できていません。精選版日本国語大辞典の「腰挫」も、「さばおり」と同じ意味の語として載せています(出典:精選版日本国語大辞典「腰挫」)。
英語では、和英辞書のJMdictが forward force down と訳し、英語版Wikipediaの「Kimarite」も Sabaori を forward force down としています(出典:Weblio英和和英・Wikipedia英語版)。
鯖折りについてよくある質問
Q. 鯖折りは反則ですか
A. 大相撲では反則ではありません。日本相撲協会は鯖折りを決まり手八十二手の捻り手の1つとして載せており、協会の禁じ手8項目にも入っていません。一方、わんぱく相撲や中学生の大会では禁じ技とされていると、時事通信と週刊ポストが伝えています。
Q. 鯖折りの読み方と英語表記は
A. 読み方は「さばおり」です。協会の表記は「鯖折り」で、辞典には「鯖折」、JMdictには「さば折り」の書き方もあります。英語は、JMdictと英語版Wikipediaが forward force down と訳し、英語版Wikipediaはローマ字で Sabaori と書いています。
Q. いまの幕内で鯖折りは見られますか
A. 2001年5月場所4日目の旭天鵬-海鵬を最後に、幕内の取組では決まっていません(相撲レファレンスの記録を当サイトが数えたもの)。十両も1990年5月場所が最後です。幕下以下では、2026年7月場所4日目に幕下の竜鳳が決めています。
Q. 鯖折りはいつからある決まり手ですか
A. 名前は1918年の『最近相撲図解』(Wikipediaの引用)や、精選版日本国語大辞典が出典に挙げる1919年の『相撲講話』に見えます。2000年12月に定められた現在の82手にも入っており、Wikipediaの一覧ではこのとき追加された手の印が付いていません。1955年に協会が決めた68手に入っていたと明記した資料は、当サイトでは確認できませんでした。
Q. 鯖折りとベアハッグは同じ技ですか
A. 別の技です。精選版日本国語大辞典はレスリングの鯖折りを相撲とは別の語義に立て、「相撲のようにまっすぐ引くことはできない」と書いています。Wikipediaも、ベアハッグは上から圧迫しなくても成立する点が相撲の鯖折りと違うとしています。見た目が似ているため、プロレスでは「熊式鯖折り」と呼ぶこともあります。
Q. 鯖折りで決まった取組は、どこで確かめられますか
A. 協会の鯖折りの詳細ページは、平成25年1月場所以降の8番を「鯖折りで勝った力士」として取組日つきで全部載せています。それより前の取組や相手の力士は、相撲レファレンス(sumodb)の取組検索で決まり手を鯖折りに指定すると確かめられます。現役力士の地位は力士一覧で確認できます。
まとめ|鯖折りは、引きつけてのしかかり膝をつかせる珍しい捻り手
鯖折りとは、外側から両まわしを引きつけ、上からのしかかって腰をつぶし、相手に膝をつかせる捻り手です。
協会の説明文で比べると、倒して勝てば寄り倒しや浴びせ倒し、土俵の外へ出せば寄り切りや吊り出しで、膝をつかせて勝つと書くのは鯖折りだけです。協会の集計では全階級192,560番のうち8回・68位で、相撲レファレンスの幕内の記録では1950年代の51番をピークに、2001年5月の旭天鵬-海鵬が最後になっています。大相撲では反則ではありませんが、受けた側の負担が大きい技として、わんぱく相撲や中学生の大会では禁じ技です。名前の由来は、Wikipediaが魚の締め方としている一方で、辞典は明記していません。
決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】に、同じ捻り手の技は肩透かしと内無双に、体を預けて倒す技は寄り倒しにまとめています。
協会と辞典の説明を読むかぎり、鯖折りは相手を持ち上げも投げもせず、上から体重を預けて真下へ落とす技で、それだけに体の大きな力士の技として記録に残ってきたと当サイトは読んでいます。

