相撲の稽古とは、力士が技と体を鍛える練習のことで、基本は四股・鉄砲・すり足の3つです。日本相撲協会は、この3つを相撲の稽古の代表的な基本動作として挙げています。基本動作で体をつくったあと、申し合いや三番稽古など相手と取る稽古で実戦の力を磨きます。朝稽古の開始時刻に公式の定めはなく、部屋や場面ごとに違います。この記事では、稽古の7つの種類、朝稽古の流れと時間の例、出稽古と一門の連合稽古、家庭でもできる協会の基本動作を、辞書・協会・報道の出典付きで整理します。
この記事でわかること
- 「稽古」という言葉の意味と、相撲の稽古の基本3つ
- 朝稽古が番付の低い力士から始まる流れと、時間の例
- 四股から申し合いまで、7つの稽古の動作と目的
- 申し合いと三番稽古の違い
- 出稽古がコロナ期に止まり、2022年に解禁された経緯
- 2026年9月場所前に報道された稽古の実例
- 家庭や学校で手本にできる協会の「相撲基本動作」
相撲の稽古とは:力士の一日を支える鍛錬の体系
相撲の稽古は、基本動作で体をつくり、相手と行う稽古で実戦の力を磨く、という順に積み上げていく練習です。
稽古の中身は大きく3つの段に分かれます。1段目は四股・鉄砲・すり足・股割りのように一人でもできる基本動作、2段目は申し合い・三番稽古・ぶつかり稽古のように土俵で相手と行う稽古です。3段目が、自分の部屋を出て行う出稽古や一門の連合稽古、横綱審議委員会による稽古総見です。下の段ができて初めて上の段が生きる、という関係になっています。
「稽古」の意味|辞書では「武術・技術などを習うこと」
辞書の「稽古」は、芸能・武術・技術などを習うことや練習を指し、相撲でも練習の意味で使います。
デジタル大辞泉は「稽古」を、「古(いにしえ)を稽(かんが)える」という意味から来た語として、「芸能・武術・技術などを習うこと。また、練習。」と説明しています(コトバンク「稽古」)。力士の世界では、早朝に行う練習を「朝稽古」と呼びます。同じ辞書は朝稽古を「早朝にするけいこ」と書いています(コトバンク「朝稽古」)。
相撲の稽古の基本3つ|四股・鉄砲・すり足
相撲の稽古の基本3つは四股・鉄砲・すり足で、日本相撲協会が代表的な基本動作として挙げています。
協会は相撲健康体操の案内の中で、「相撲の稽古には、四股、鉄砲、すり足など代表的な基本動作があります」と書いています。3つとも、重心を下腹部(臍下丹田)へ導き、体の中心軸である背骨を強く安定させるための工夫がされている、というのが協会の説明です(日本相撲協会「相撲健康体操」)。
- 四股:両足を開いて構え、足を左右交互に高く上げ、手をひざに当てて力を入れて地を踏む動作
- 鉄砲:両手または片手に力をこめて相手を突く動き。柱に手を打ち付けて稽古することも鉄砲と呼ぶ
- すり足:足の裏を土俵からすって前へ運ぶ動き
四股と鉄砲の説明はデジタル大辞泉(四股・鉄砲)によります。辞書の「摺り足」は一般の歩き方の意味だけを載せていて、相撲での位置づけは協会の「代表的な基本動作」という説明が根拠になります。
朝稽古の流れ:番付順に積み上がる稽古の時間割
朝稽古は番付の低い力士から始まり、幕内・大関・横綱と、時間を追って上位の力士の稽古へ移っていきます。
協会は巡業の案内で、「早朝から幕下以下の力士が…激しい稽古に精進します。その後、幕内・大関・横綱と激しい稽古が続きます」と説明しています(日本相撲協会「巡業タイムテーブル」)。番付の地位と呼び名は番付とは?相撲の階級・仕組み・見方を初心者向けにわかりやすく解説で確かめられます。
部屋の朝稽古の順番は、2024年5月に時津風部屋を訪ねた「さんたつ」の見学記に具体的に書かれています。四股の音が鳴りやむと、すり足、そして土俵を使った稽古へ移るという流れです(さんたつ「時津風部屋の朝稽古」)。基本動作で体を温め、相手と行う稽古へ進む、という体系図の順と同じです。巡業の稽古がどのような1日の中で行われるかは大相撲の巡業とは?本場所との違い・一日の流れ・楽しみ方を完全ガイドにまとめています。
朝稽古は何時から?部屋ごとに違う
朝稽古の開始時刻を協会が一律に定めた公式の記述はなく、時間は部屋や場面ごとに違います。
時間がわかる公開情報の例を3つ並べます。どれも「その場面ではこうだった」という例で、ほかの部屋や日に当てはまる決まりではありません。
| 場面 | 時間の例 | 出典 |
|---|---|---|
| 時津風部屋の朝稽古(2024年5月の見学記) | 早い力士は7時に稽古場へ入る | さんたつ |
| 横審の稽古総見(2026年5月1日・国技館) | 開場8時、稽古は11時まで(予定) | 日本相撲協会のお知らせ |
| 巡業の公開稽古 | 9時30分頃〜10時30分頃。幕下以下は早朝から | 日本相撲協会「巡業タイムテーブル」 |
※2026年9月26日取得。朝稽古の時刻は部屋・時期・番付で変わるため、見学の前に部屋の案内で確かめてください
本場所の日の力士の動きは稽古とは別の時間割になります。開場から弓取式までの流れは大相撲の一日のスケジュール完全ガイド|開場から弓取式までの時間割をご覧ください。
朝稽古見学のポイント
朝稽古の見学は、部屋ごとに受け入れの有無や申し込み方が違うため、行く前に部屋の案内を確かめます。
いつでも誰でも決まった時刻に見られるわけではありません。見学を受け入れている部屋でも、申し込み方や日程は部屋ごとに分かれます。協会が一般公開した稽古総見の案内には「稽古中は静かにご観覧下さい」とあります。部屋の稽古場での作法は、見学を受け入れる部屋の案内に従います。朝稽古見学ができる部屋と、料金・時間を比べた体験の選び方は東京の相撲体験5選|料金・時間を比較、朝稽古見学との違いも解説にまとめています。
稽古の種類と目的:7つのメニューを徹底解説
相撲の稽古の種類は、体をつくる基礎系の4つと、相手と行う実戦系の3つ、合わせて7つに整理できます。
協会の公式サイトに稽古の種類を一覧にしたページはないため、この記事では辞書と協会の説明をもとに、次の7つにまとめました。
| 系統 | 稽古 | 動作 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 基礎系 | 四股 | 足を左右交互に高く上げ、力を入れて地を踏む | 重心を下げ、体の軸を安定させる |
| 基礎系 | 鉄砲 | 柱に手を打ち付ける | 相手を突く力をつける |
| 基礎系 | すり足 | 足を土俵からすって前へ運ぶ | 重心を下げたまま前へ出る |
| 基礎系 | 股割り | 両足を大きく開いて座り、上半身を前に倒す | 股関節の柔軟性をつける |
| 実戦系 | 申し合い | 力量が互角の力士どうしで相撲を取る | 互角の相手と実戦の相撲を重ねる |
| 実戦系 | 三番稽古 | 実力の近い2人が何番も続けて取る | 稽古量を増やし地力を養う |
| 実戦系 | ぶつかり稽古 | 受け方とぶつかり方の二手に分かれる | 押しと受け身を身につける |
※出典:デジタル大辞泉(コトバンク「四股」「鉄砲」「股割」「申合い」「ぶつかり稽古」)、日本相撲協会「相撲健康体操」「大相撲クイズ No.633」(2026年9月26日取得)。系統の分け方は大相撲百科による
基礎系稽古(四股・鉄砲・すり足・股割り)
基礎系の4つは、下半身と体の軸をつくる稽古で、相手の力士がいなくても一人で行えます。
四股・鉄砲・すり足の3つは上で見た基本の3つです。協会の「相撲基本動作」は四股の注意点として、手で足を持ち上げるのではないこと、前傾姿勢にならないよう常に胸を張ることを挙げています(日本相撲協会「相撲基本動作」)。
4つ目の股割りについて、デジタル大辞泉は「股関節の柔軟性をつける運動。ひざを伸ばしたまま尻を地面につけ、両足を大きく開いて、上半身を前に倒すもの」と説明しています(コトバンク「股割」)。協会の「相撲基本動作」でも、股割は附録の1つとして載っています。
実戦系稽古(申し合い・三番稽古・ぶつかり稽古)
実戦系の3つは、土俵で相手と向き合って行う稽古で、申し合い・三番稽古・ぶつかり稽古があります。
申し合いと三番稽古は、実際に相撲を取って勝ち負けがつく稽古です。違いは次の見出しで整理します。ぶつかり稽古は勝ち負けを争いません。デジタル大辞泉によると「二手に分かれ、受け方は守りを、ぶつかり方は押しと受け身の稽古をする」ものです(コトバンク「ぶつかり稽古」)。勝ち負けではなく、押す力と受け身の繰り返しが目的の稽古です。
申し合いと三番稽古の違い
報道の使い方を見ると、申し合いは複数の相手と取り、三番稽古は同じ2人が何番も続けて取る点が違います。
デジタル大辞泉は申し合いを「力量が互角の力士どうしのけいこ」と説明しています(コトバンク「申合い」)。2026年9月4日の稽古総見を伝えた日本経済新聞は、大関霧島が「申し合いで横綱大の里らと16番取って10勝6敗」だったと書いており、相手が1人に限られていないことがわかります(日本経済新聞)。
三番稽古について協会は、「実力の接近した力士どうしが二人だけで何番も続けて対戦する稽古」と説明しています。「三番」は数が多いという意味で、多いときは20番、30番と続けます(日本相撲協会「大相撲クイズ No.633」)。
出稽古と合同稽古:部屋の壁を越えた実戦鍛錬
出稽古は、よその相撲部屋に出向いて稽古をすることで、ふだんの部屋にいない相手と相撲を取れます。
デジタル大辞泉は出稽古を「相撲で、よその部屋に出向いてけいこをすること」と説明しています(コトバンク「出稽古」)。出稽古は、自分の部屋にいない力士と胸を合わせられる場になります。合同稽古は、出稽古ができなかったコロナ期に国技館で行われた稽古です。
出稽古とは|コロナ期の自粛と2022年の解禁
出稽古は2020年3月の春場所前を最後に自粛され、2022年6月に期間を区切って解禁されました。
日本経済新聞(2022年5月26日)によると、協会は新型コロナウイルスの影響で自粛していた出稽古を、2022年6月6日から22日までの期間に限って解禁しました。条件は師匠間の合意と協会への報告です。記事は、2020年10月から国技館内で一定期間行ってきた合同稽古をこのとき実施しないとも伝えています(日本経済新聞)。合同稽古は本場所前の恒例の行事ではなく、出稽古の代わりに設けられた場でした。
その後、場所前の出稽古は報道に再び出てくるようになっています。2026年9月9日には、横綱大の里が東京都足立区の境川部屋へ出稽古に出向き、平戸海と20番続けて取って11勝9敗だったと報じられました(Sumostatsによる報道の要約)。
一門の連合稽古と横審の稽古総見
一門の連合稽古は同じ一門の部屋が集まる稽古、稽古総見は横綱審議委員会が見る場で行う稽古です。
2026年9月7日には、千葉県松戸市の佐渡ケ嶽部屋で二所ノ関一門の連合稽古が行われ、報道によると大の里が大関琴桜との三番稽古で20番取り、16勝4敗でした(Sumostatsによる報道の要約)。
稽古総見は本場所前に国技館で行われ、一般に公開される回もあります。2026年5月1日の回について協会は、一般公開・入場無料と告知していました。総見での勝ち負けは稽古の記録で、本場所の星とは別のものです。稽古総見と、それを伝えるテレビ番組の内容はがっぷり総見とは?BSフジの相撲番組と稽古総見をわかりやすく解説で詳しく書いています。
2026年秋場所前の稽古|報道で見る実例
2026年9月場所前は、9月2日の稽古再開から13日の初日までに、総見・連合稽古・出稽古が続きました。
横綱大の里の動きを中心に、報道された稽古を日付順に並べると次のようになります。9月2日には茨城県阿見町の二所ノ関部屋で幕下力士と15番続けて取り、秋場所へ向けて本格的に稽古を再開したと共同通信が伝えています(琉球新報掲載の共同通信記事)。
報道で追える範囲だけでも、部屋の中の稽古から、国技館の総見、一門の連合稽古、よその部屋への出稽古へと、相手の幅を広げながら初日を迎えていることがわかります。体系図の1段目から3段目までが、場所前の11日間にそろって出てくる形です。
家庭や学校でできる相撲の練習|協会の基本動作
家庭や学校で相撲の練習をするなら、日本相撲協会の「相撲基本動作」と相撲健康体操が手本になります。
力士の稽古をそのまま真似るのではなく、協会が一般向けに型をまとめた2つを使うのが近道です。どちらも協会の公式サイトで公開されています。
協会の「相撲基本動作」十の型
協会の「相撲基本動作」は、基本姿勢5つと十の型、附録3つで組み立てられています。
協会の指導普及部がまとめた「相撲基本動作」の目次は次のとおりです(日本相撲協会「相撲基本動作」)。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 基本姿勢(5つ) | 蹲踞・四股の構え・仕切・中腰の構え・直立 |
| 十の型(一〜五) | 一 気鎮めの型/二 塵手水の型/三 四股の型/四 伸脚の型/五 仕切の型 |
| 十の型(六〜十) | 六 攻めの型/七 防ぎの型/八 四つ身の型/九 反りの型/十 土俵入の型 |
| 附録(3つ) | 上段の構え・股割・均整の型 |
※出典:日本相撲協会「相撲基本動作」(PDF目次、2026年9月26日取得)
十の型には、基本の3つのうち四股が「四股の型」として入っています。股割も附録にあり、力士の基礎系の稽古と重なる部分が多い構成です。
子どもから高齢者までの相撲健康体操
相撲健康体操は、相撲の基本動作の型を手本に、子どもから高齢者まで行えるよう考案された体操です。
協会は、相撲の基本動作の型を手本にし、「子どもからお年寄りまで、女性、男性、どなたでも楽しくおこなう事ができる健康体操」として考案したと説明しています(日本相撲協会「相撲健康体操」)。四股・鉄砲・すり足が持つ、重心を下げて背骨を安定させる工夫を、体操の形で取り入れられるのが特徴です。
相撲の稽古についてよくある質問
相撲の稽古の日程、稽古総見の見学、ぶつかり稽古、三番稽古の数え方などの疑問に、出典をもとに答えます。
Q. 相撲の稽古は毎日ありますか?
A. 稽古の日程を協会が一律に定めた公式の記述はなく、部屋や力士によって違います。報道で追えるのは本場所前の動きで、2026年9月場所前は9月2日の稽古再開から13日の初日までに、稽古総見(4日)、一門の連合稽古(7日)、出稽古(9日)が続きました。場所前の稽古の様子は、この期間の報道で確かめられます。
Q. 稽古総見は誰でも見られますか?
A. 一般公開される回は見られます。協会は2026年5月1日の稽古総見を一般公開・入場無料とし、開場は午前8時、稽古は11時まで(いずれも予定)と告知していました。公開されるかどうかは回ごとに協会のお知らせで発表されるため、行く前に告知を確かめてください。
Q. ぶつかり稽古は何のために行うのですか?
A. 押しと受け身を身につけるためです。デジタル大辞泉は、二手に分かれて受け方は守りを、ぶつかり方は押しと受け身の稽古をすると説明しています。申し合いや三番稽古と違って勝ち負けを争わないため、稽古の回数を勝敗で数えることはありません。何番目に行うかを定めた一次の記述は見当たりません。
Q. 三番稽古の「三番」は3回という意味ですか?
A. 3回に限りません。協会の大相撲クイズは、「三番」は数多くという意味で、多いときは20番、30番と続けると説明しています。デジタル大辞泉も、もとは3番続ける稽古だったものが「現在は何番でも続ける」と書いています。2026年9月7日の連合稽古では、大の里と琴桜の三番稽古が20番に及んだと報じられました。
Q. 出稽古は力士が自由に行けるのですか?
A. 2022年6月に解禁されたときの条件は、師匠間の合意と協会への報告でした(日本経済新聞、2022年5月26日)。力士が一人の判断で出向くのではなく、行く側と受ける側の師匠の合意が前提です。この条件がその後どう扱われているかを示す協会の公式の告知は見当たりません。
Q. 子どもが相撲の練習を始めるなら何からがよいですか?
A. 協会が公開している「相撲基本動作」と相撲健康体操が手本になります。基本動作は蹲踞などの基本姿勢5つから始まり、四股の型を含む十の型へ進む構成です。四股は手で足を持ち上げず、胸を張って行うよう注意書きがあります。相撲健康体操は子どもから高齢者まで行えるよう考案されています。
まとめ|相撲の稽古は基本の3つから部屋の外まで積み上がる
相撲の稽古は、四股・鉄砲・すり足の基本から、申し合いや出稽古の実戦まで順に積み上がる練習です。
- 稽古の基本3つは四股・鉄砲・すり足。協会が代表的な基本動作として挙げている
- 種類は基礎系4つ(四股・鉄砲・すり足・股割り)と実戦系3つ(申し合い・三番稽古・ぶつかり稽古)
- 朝稽古は番付の低い力士から始まる。開始時刻に公式の定めはなく、部屋や場面で違う
- 申し合いは複数の相手と、三番稽古は同じ2人が何番も続けて取る
- 出稽古はコロナ期に自粛され、2022年6月に期間を区切って解禁。合同稽古はその間の代わりの場だった
- 家庭や学校では、協会の「相撲基本動作」と相撲健康体操が手本になる
稽古の先にある本場所の取組や番付、勝敗の決まり方は大相撲の仕組みを徹底解説|取組・番付・ルールを初心者向けにわかりやすくでまとめています。

