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蹴手繰り(けたぐり)とは?相撲の決まり手の意味と蹴返しとの違い|時天空・朝青龍の一番も解説

蹴手繰り(けたぐり)とは?相撲の決まり手の意味と蹴返しとの違い|時天空・朝青龍の一番も解説

蹴手繰り(けたぐり)とは、立合いの瞬間に体を開き、相手の足を内側から外へ蹴って、肩を叩くか手をたぐって前に倒す相撲の決まり手です。日本相撲協会が定める決まり手八十二手のうち「掛け手」18手の1つです。協会の集計では、平成25年1月場所から令和8年9月場所千秋楽までの全階級192,672番のうち23回・59位です。相撲レファレンスの記録を当サイトが数えたところ、幕内で最後に決まったのは2017年5月場所の荒鷲-豪風でした。名前の似た蹴返しとは、蹴る場所と足の部位の書き方が違います。ポケモンにも同じ名前の技がありますが、この記事は相撲の解説です。

この記事でわかること

  • 協会の2つの定義文と、「体を開く・足を蹴る・前に倒す」の3コマ図
  • 192,672番のうち23回・59位という数字の中身と、段ごとの内訳
  • 蹴返し・二枚蹴り・足取り・叩き込みとの違いの表と見分け図
  • 海乃山の25番から時天空・翔猿まで、使い手の記録
  • 横綱・大関を倒した一番と、2006年の朝青龍をめぐる横審の苦言
  • ポケモンの技名・政治の比喩・囲碁の用語の「けたぐり」との区別
目次

蹴手繰りとは|立合いの瞬間に体を開き、相手の足を内側から外へ蹴って前に倒す掛け手

蹴手繰りとは、立合いで正面から当たらずに体を開き、相手の足を内側から外へ蹴って前に倒す掛け手です。

日本相撲協会の公式サイトは、蹴手繰りを次のように説明しています。

立ち合いの瞬間、体を開いて相手の足を内側から外に蹴り、肩などを叩くか、手をたぐって前に倒して勝ちます!

出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 蹴手繰り」

下の図は、この説明文を当サイトが3つの場面に分けたものです。蹴る足の左右や、足のどの部分で蹴るかは書かれていません。

蹴手繰りが決まる3コマ(赤が仕掛ける側)1 立合いで体を開く正面から当たらず、体を横へ開く2 足を内側から外へ蹴る出てきた足を内側から外へ払う3 肩を叩くか手をたぐる相手は前のめりに手をつく協会の説明文「立ち合いの瞬間、体を開いて相手の足を内側から外に蹴り…」を当サイトが3場面に分けた

図は説明文の読み解きで、技のかけ方の手ほどきではありません。決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】にまとめています。

協会の説明は2通りあり、キッズページは「肩を叩いて」に絞る

協会の子ども向けページは「手をたぐって」を書かず、「同時に相手の肩を叩いて」前に倒すと説明しています。

立合いの瞬間に、体を左右いずれかに開きながら相手の足を内側から外に蹴り、同時に相手の肩を叩いて前に倒して勝ちます。

出典:日本相撲協会「おしえて八十二手」(掛け手⑦ 蹴手繰り)

キッズページは開く向きを「左右いずれか」とし、肩を叩くのを「同時に」としています。表記も詳しい説明のページの「立ち合い」に対して「立合い」です。

辞典の説明は、立合いに限らないものもあります。ブリタニカ国際大百科事典は「立ち上がりざまか,突き合い押し合い中」に相手の足首あたりを内側から蹴る技とし、デジタル大辞泉は「相手と当たる瞬間に体を開き」と協会と同じ場面で説明しています(出典:コトバンク「蹴手繰り」)。

読みは「けたぐり」、表記は蹴手繰り・蹴手繰・蹴たぐり

読みは「けたぐり」です。動詞「けたぐる」の名詞形で、辞典の見出しの表記は「蹴手繰り」と「蹴手繰」の2つです。

精選版日本国語大辞典は、名詞の最も古い用例に『相撲講話』(1919年)を挙げています(出典:コトバンク「蹴手繰」)。動詞「けたぐる」には相撲とは別に「足で蹴って、物を足元に引き寄せるようにする」という意味もあり、こちらは江戸時代中期の雑俳(1711〜16年ごろ)に用例があります(出典:コトバンク「蹴手繰る」)。「蹴たぐり」と書く例もありますが、コトバンクの辞典の見出しにはありません。

Wikipedia日本語版は旧称を「つつき蹴返し」とし、1918年の『最近相撲図解』を出典に挙げています(出典:Wikipedia「蹴手繰り」)。当サイトはこの元の本を確かめていません。

足を蹴っても反則ではない|禁じ手で蹴りに関わるのは胸と腹だけ

足を蹴る技は反則ではありません。協会の禁じ手8項目のうち、蹴りに関わるのは「胸、腹を蹴ること」だけです。

協会の大相撲クイズ No.711 は「審判規則 禁手反則」の8項目を挙げ、その7番目が「胸、腹を蹴ること」で、足を蹴ることは入っていません(出典:日本相撲協会「大相撲クイズ No.711」)。一方で蹴手繰りは、決まり手八十二手の掛け手に入っています。協会が「反則ではない」と書いた文は見つかりませんでしたが、2つを突き合わせると認められた技だと分かります。

協会のクイズ No.1266 は、蹴手繰りや蹴返しなど足を使う技の通称を「飛び道具」とし、「足技を飛ばすと一瞬で勝負が決まったりするのでこのように別称されています。」と解説しています(出典:日本相撲協会「大相撲クイズ No.1266」)。

蹴手繰りはどれくらい出るのか|192,672番のうち23回・59位

協会の集計では、平成25年1月場所以降の全階級192,672番のうち23回で、決まり手の59位です。

割合は0.01%です。順位が1つ上の58位はちょん掛けの25回、1つ下の60位は大逆手の20回です。集計の期間は「平成二十五年一月場所~令和八年九月場所千秋楽」で、幕内だけでなく序ノ口までの取組を含みます(出典:日本相撲協会「決まり手」一覧)。

令和8年9月場所は、全6段の2,222番で蹴手繰りは0番でした。同じ場所で蹴返しは2番、足取りは5番出ています。令和5年9月場所からの19場所の幕内・十両の取組解説7,670件にも、「蹴手繰」の語は1件もありません(「蹴返」は11件)。

掛け手18手のなかでは10番目、蹴返しの約5分の1

掛け手18手を回数の多い順に並べると蹴手繰りは10番目で、蹴返しの116回と比べて約5分の1です。

協会のクイズ No.1267 は、掛け手を「相手の足に自分の足をかける技や、相手の足を手で取る技」と定義しています(出典:日本相撲協会「大相撲クイズ No.1267」)。18手の合計は1,886回で、蹴手繰りの23回はその1.22%にあたります(当サイトの計算)。

回数の順掛け手の技名全体の順位回数
1外掛け20位573
2切り返し27位324
3足取り30位280
4・5渡し込み・内掛け35位・36位216・148
6蹴返し39位116
7・8裾払い・小股掬い44位・52位81・42
9ちょん掛け58位25
10蹴手繰り59位23
11・12二枚蹴り・河津掛け63位・64位19・17
13〜18小褄取り・外小股・裾取り・大股・三所攻め・褄取り71位〜83位6〜0
出典:日本相撲協会「決まり手」一覧(全階級・平成25年1月場所〜令和8年9月場所千秋楽の192,672番)。回数の順は当サイトが並べ替えたもの

名前に「蹴」が付く3手では、蹴返し116回・蹴手繰り23回・二枚蹴り19回の順です。蹴返しが約5.0倍多い理由を説明した資料は、見つかりませんでした。同じ掛け手の切り返しと足取りは別の記事で解説しています。

23番の内訳は幕内4・十両7・幕下以下12、2025年以降は0番

23番を相撲レファレンスの記録で段ごとに分けると、幕内4・十両7・幕下4・三段目4・序二段4でした。

協会は23回の段ごとの内訳を出していません。そこで相撲レファレンスの記録を当サイトが同じ期間(2013年1月場所〜2026年9月場所)で数えると23番になり、協会の数と一致しました(出典:相撲レファレンス(決まり手 ketaguri・全階級))。力士ごとの回数も、協会の「多い力士」15人と全員一致しています。

表の順力士番付の表記(協会)回数
1時天空元小結(引退)4
2朝前進西三段目四十六枚目3
3荒鷲元前頭二枚目(引退)2
4旭大星元前頭八枚目(引退)2
5満津田元幕下五十三枚目(引退)2
6照強元前頭三枚目(引退)1
7男女ノ里元三段目三枚目(引退)1
8栃玄武元序二段二十二枚目(引退)1
9彩元十両十一枚目(引退)1
10豊見山元序二段四十四枚目(引退)1
11千代の勝東三段目四十三枚目1
12爽西序二段三十二枚目1
13翔猿東前頭十四枚目1
14千代剣東序二段三十四枚目1
15須山東三段目十七枚目1
出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 蹴手繰り」(全階級・平成25年1月場所〜令和8年9月場所千秋楽。番付は令和8年9月場所の表示)

この期間の幕内の4番は、2014年9月場所と2015年7月場所の時天空、2015年3月場所と2017年5月場所の荒鷲です。全階級で最後に決まったのは2024年7月場所12日目、三段目23枚目の須山の勝ちでした。2025年1月場所から2026年9月場所までの11場所は、全階級で1番も出ていません。引退した時天空・荒鷲・照強らの経歴は引退力士の一覧で確認できます。

幕内では1928年以降302番、1970年代の105番が山

相撲レファレンスの記録では、幕内の蹴手繰りは1928年3月場所から2017年5月場所までの302番です。

年代幕内で決まった番数
1920年代(1928年から)2
1930年代0
1940年代21
1950年代63
1960年代50
1970年代105
1980年代16
1990年代20
2000年代10
2010年代15
2020年代(2026年9月場所まで)0
合計302
出典:相撲レファレンス(決まり手 ketaguri・幕内)。勝った側で1番を1回として当サイトが数えた

302番のうち昭和が255番、平成が47番で、令和は0番です。十両は1956年3月場所から2021年11月場所までの197番で、幕下以下まで合わせた全階級では1928年以降654番になります。1955年より前の86番は、相撲レファレンスがあとから分類したものとみられます。

蹴手繰りと蹴返し・二枚蹴り・足取りの違い|どこを何で蹴るか

蹴手繰りと蹴返しは、協会の説明では技に入る場面、蹴る場所と使う部位、手の使い方の3点が違います。

下の表は、相手の足を攻める掛け手と、前に落とす特殊技について、協会の説明を並べたものです。

技(分類)相手のどこを、何で攻めるか(協会の説明)入る場面(協会の説明)倒し方(協会の説明)回数・順位
蹴手繰り(掛け手)相手の足を内側から外に蹴る(足のどこで蹴るかは書かれていない)立ち合いの瞬間、体を開いて肩などを叩くか、手をたぐって前に倒す23回・59位
蹴返し(掛け手)相手の右(左)足首を、自分の右(左)足の裏で内側から外に蹴るいきなり。同時に体を開く肩を叩いて前に落とすように倒す116回・39位
二枚蹴り(掛け手)相手の左(右)足のくるぶしのあたりを、右(左)足で外側から蹴る相手の体を吊り上げて蹴った足の方へ倒す19回・63位
裾払い(掛け手)相手が前に出した右(左)足を、後ろから左(右)足で払う出し投げや引っ掛けを打ったとき倒す81回・44位
足取り(掛け手)両手で相手の片足を抱える相手の下にもぐり込んで倒すか、土俵外に出す280回・30位
叩き込み(特殊技)足は攻めない。片手か両手で肩・背中・腕などを叩く相手が低く出てきたとき、体を開きながら落とす15,881回・3位
出典:日本相撲協会「決まり手八十二手」の各技の説明(蹴手繰り・蹴返しほか)と決まり手の一覧(全階級・平成25年1月場所〜令和8年9月場所千秋楽)

次の図は表を問いの順に並べたものです。

足を攻める技と前に落とす技の見分け方(協会の説明文から当サイトが作成)相手の足を蹴ったか、払ったかいいえはい手で相手の足を取ったか相手の足をどの向きに蹴ったかはいいいえ両手で片足を抱える足取り肩・腕を叩く、引く叩き込み・引き落とし吊り上げて外側から二枚蹴り投げのあと後ろから裾払い内側から外へ協会の文言は立ち合いの瞬間相手の足を蹴る蹴手繰りいきなり、足首を足の裏で蹴る蹴返し協会の判定基準ではなく、各技の説明文を当サイトが並べ替えたもの

蹴返しは「足首を足の裏で」蹴る。協会の文言の違いは3点

協会の説明で蹴返しは相手の足首を「自分の右(左)足の裏で」蹴る技で、蹴手繰りは「相手の足を」蹴る技です。

いきなり相手の右(左)足首を自分の右(左)足の裏で内側から外に蹴りながら、同時に体を開いて相手の肩を叩いて前に落とすように倒して勝ちます!

出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 蹴返し」

違いは、入る場面(「立ち合いの瞬間」と「いきなり」)、蹴る場所と部位(「相手の足」と「足首」を「足の裏」で)、手の使い方(「肩などを叩くか、手をたぐって」と「肩を叩いて」)の3点です。協会のクイズ No.672 は蹴返しの説明文を出題し、解説に誤答の選択肢として蹴手繰りの説明文を並べています(出典:日本相撲協会「大相撲クイズ No.672」)。協会自身が、取り違えやすい組として扱っている例です。

辞典の書き分けは、協会と少し違います。ブリタニカは両方とも相手の「足首あたりを内側から」蹴って腕をたぐる技とし、違いを蹴手繰りの「立ち上がりざまか,突き合い押し合い中」と、蹴返しの「四つ身の上体から」に置いています(出典:コトバンク「蹴返し」)。

「立合いなら蹴手繰り、攻防中なら蹴返し」は協会の基準ではない目安

「立合いなら蹴手繰り、攻防中なら蹴返し」という分け方は、協会の説明文には書かれていない目安です。

Yahoo!知恵袋の2015年の質問への回答は、蹴手繰りと蹴返しを「立合いの瞬間」と「四つ身になった時」で分けています。協会の文言では蹴返しは「いきなり」で、立合いか攻防中かは書かれていません。ブリタニカは蹴手繰りにも「突き合い押し合い中」を含めているので、時間だけで分けると辞典の説明とも食い違います。 2012年7月の個人の相撲ブログにある「組んだ状態でやると蹴返し」という説明も、協会の文言にはない条件です。

二枚蹴り・裾払い・叩き込み・引き落としとの違い

二枚蹴りは相手を吊り上げてくるぶしを外側から蹴り、裾払いは後ろから払う技で、蹴手繰りとは蹴る向きが違います。

協会は二枚蹴りの補足に「「二枚」とは足の膝から足首の部分の外側のことを言います。」と書いています。蹴手繰りは立合いに「内側から外に」蹴るので、吊っているか、投げを打ったあとかで分かれます。

叩き込みと引き落としは、足を攻めない特殊技です。叩き込みは体を開いて前に落とす点が蹴手繰りと同じで、足を蹴ったかどうかで分かれます。前に落とす技は引き落としと肩透かしでも解説しています。

蹴手繰りの使い手|海乃山の25番から時天空・翔猿まで

幕内の記録が最も多いのは海乃山の25番で、平成以降では時天空の17番が最多です。

順力士幕内で決めた番数
1海乃山25
2出羽湊・二子岳各23
4藤ノ川22
5時天空17
6吉葉山16
7星甲13
8旭國12
9若獅子11
10若浪・大竜川各10
出典:相撲レファレンス(決まり手 ketaguri・幕内)。1928年3月場所〜2026年9月場所を当サイトが数えた

十両の記録では星岩涛の27番が最多です(相撲レファレンスの記録を当サイトが数えた結果)。

幕内の記録は海乃山25番、出羽湊・二子岳23、藤ノ川22が続く

上位4人はいずれも昭和の力士で、4人とも横綱か大関を蹴手繰りで破った記録があります。

ブログ「土俵の目撃者」は、相撲記者・田口通廣の記述として名手の幕内の回数を「海乃山25度・二子岳23度・藤ノ川22度」と紹介し、勝てない相手に効く奇襲である一方「失敗すると、いっぺんに持っていかれる恐れがある。」技だという田口の説明も載せています(出典:土俵の目撃者)。Wikipedia日本語版の海乃山の項は「腰の負傷から蹴手繰りなど注文相撲を交える必要に追われた。」と書いています。

大型の横綱だった吉葉山も、幕内で16番を記録しています。勝ったときの地位を相撲レファレンスで数えると、平幕12・関脇2・大関1・横綱1でした。

平成以降は時天空の17番が最多、白鵬は「足技のキレは抜群」と追悼

時天空は2008年1月場所から2015年7月場所までに幕内で蹴手繰りを17番決め、平成以降の幕内で最多です。

協会の集計でも時天空の4回が最多で、裾払いでも8回で最多です。2017年に亡くなった時天空を追悼する記事で、白鵬は「けたぐりなどの足技のキレは抜群でした。」と語り、関取衆に警戒されていたと振り返っています(出典:web Sportiva(2017年2月21日))。

現役で決めたことがあるのは翔猿・朝前進ら6人

協会の「多い力士」で現役なのは、翔猿・朝前進・千代の勝・須山・爽・千代剣の6人で、合わせて8回です。

幕内にいるのは前頭十四枚目の翔猿だけです。翔猿の1回は2019年3月場所14日目、十両11枚目のときに蒼国来に勝った一番です(出典:スポーツナビ「2019年3月場所 星取表」)。翔猿は蹴返しでは協会の集計で17回の最多で、協会の取組解説は令和6年7月場所14日目の一番を「絵に描いたような蹴返しで欧勝馬這わせて勝ち越した。」と書いています。

朝前進は2025年9月場所に朝乃若から改名した力士で、協会の3回は寺沢・朝乃若の名前だったころの記録を合わせた数です。現役力士の地位は現役力士一覧で確認できます。

蹴手繰りが決まった大一番|横綱・大関を倒した一番

相撲レファレンスの幕内の記録(1928年以降)では、蹴手繰りで横綱が負けた取組は13番、大関は24番です。

横綱が負けた最後は1991年3月場所2日目、小結寺尾が大乃国に勝った一番です。大関が負けた最後は2012年の稀勢の里です。勝った側が横綱だった例は、1947年11月場所の照國、1956年9月場所の吉葉山、2006年11月場所の朝青龍の3番しかありません(出典:相撲レファレンス(決まり手 ketaguri・幕内))。

海乃山は横綱大鵬を蹴手繰りで2度破った(1964年7月の一番は蹴返し)

海乃山が大鵬に蹴手繰りで勝ったのは、1965年3月場所6日目と1967年11月場所11日目の2番です。

Wikipedia日本語版の「蹴手繰り」は、1964年7月場所4日目に海乃山が大鵬を破り、休場に追い込んだ一番を蹴手繰りの例に挙げています。相撲レファレンスの記録では、この一番の決まり手は蹴返しです(出典:相撲レファレンス(海乃山-大鵬の全対戦))。大鵬はこの場所、1勝4敗10休でした。

海乃山は1967年11月場所の5日目に大関北の富士、11日目に横綱大鵬を蹴手繰りで破り、1968年にも北の富士を2度、琴櫻を1度破っています。

2012年春場所、時天空が大関稀勢の里に勝ったのが大関が敗れた最後

2012年3月場所5日目、前頭2枚目の時天空が大関稀勢の里を蹴手繰りで破りました。大関が負けた最後の例です。

日刊スポーツは写真の説明に「12年3月15日 稀勢の里(左)をけたぐりで破る」と記しています(出典:日刊スポーツ)。稀勢の里は6年前にも、次の章で取り上げる朝青龍の蹴手繰りに敗れています。

幕内の最後は2017年夏場所の荒鷲-豪風、関取の最後は2021年の朝乃若

幕内の最後は2017年5月場所11日目に荒鷲が豪風に勝った一番で、関取の最後は2021年11月場所の朝乃若です。

荒鷲はこのとき前頭11枚目、豪風は前頭6枚目でした。新十両の朝乃若(現・朝前進)は、2021年11月場所の8日目に水戸龍、千秋楽に琴勝峰を蹴手繰りで破り、この場所を10勝5敗で終えています(出典:スポーツナビ「2021年11月場所 星取表」)。それから2026年9月場所までの約5年、十両以上では1番も出ていません。Number(広尾晃、2018年1月)は、50年前の土俵と比べて「そして足技もほぼなくなった。」と書いています(出典:Number Web)。

横綱の蹴手繰りは品格に欠けるのか|2006年の朝青龍と横審の苦言

2006年11月場所で横綱朝青龍が蹴手繰りで勝ったあと、横綱審議委員会で品格に欠けるという苦言が相次ぎました。

苦言は横綱が立合いで変化して奇襲をかけたことに向けられ、決まり手として正当な技だという反論も出ました。当サイトはどちらの立場もとらず、当時の報道の言葉を並べます。横綱に求められる役割は横綱とはで解説しています。

朝青龍は前の場所で負けた稀勢の里に蹴手繰りで勝った

2006年11月場所8日目の結びで、横綱朝青龍は小結稀勢の里に蹴手繰りで勝ちました。前の9月場所では稀勢の里に敗れていました。

朝日新聞は、朝青龍が「8日目の結びで左に変化し、右足で稀勢の里の右ひざをけ飛ばした。」と報じています(記事を書き写したページで確認)。朝青龍はこの場所を15戦全勝で優勝しています。朝青龍が蹴手繰りの理由を話したとされる言葉は、横審委員の発言の中で間接的に伝わっているだけで、本人の取組後のコメントの原文は見つかりませんでした。

相撲レファレンスの記録で、朝青龍の蹴手繰りの勝ちは2001年11月場所の出島戦、2002年3月場所の大関千代大海戦と合わせて3番です。2007年7月場所の雅山戦でも立合いで仕掛けましたが決まらず、決まり手は寄り切りでした。

横審は出席8人全員が苦言、決まり手として正当だとする反論もあった

毎日新聞によると、11月27日の横審では出席した委員8人全員が「やるべきでない。品格にかける」と述べたと報じられました。

発言者伝えた媒体報じられた言葉
委員8人毎日新聞出席した全8委員が「やるべきでない。品格にかける」
石橋義夫委員長朝日新聞「横綱の品格を考えれば、してはいけない技。」
石橋義夫委員長毎日新聞「受けて立つ余裕を見せてほしかった」
内館牧子委員読売新聞「蹴手繰りなんて、そもそも語感が汚いわね。」
内館牧子委員毎日新聞「けたぐりという言葉自体、品がない」
横審のまとめ読売新聞「品格の問題からもよろしくない。受けて立つ相撲を取ってほしい」
2006年11月27日の横綱審議委員会についての各紙の記事(いずれも元の記事のページは開けず、記事を書き写したページで当サイトが確認した)。同じ委員の発言でも新聞によって言い回しが違うため、並べて載せている

石橋義夫委員長は2日後の会見でも「横綱ともあろうものが、けたぐりという奇襲作戦をとるのはおかしい。」と述べたと、ジャーナリストの岡崎満義がコラムで引いています。その岡崎は「横綱らしくない、と目クジラ立てることではないと思う。」と書いています(出典:スポーツネットワークジャパン 岡崎満義のコラム)。萬晩報の成田好三も「蹴手繰りは相撲の決まり手として認められている正当な技である。」と反論しました(出典:萬晩報(2006年12月1日))。毎日新聞の記事は、朝青龍がこの年に19種類の決まり手で幕内最多の67勝を挙げたことにも触れています。

2024年初場所、翔猿が横綱照ノ富士に2度仕掛けた一番

2024年1月場所6日目、翔猿は横綱照ノ富士の左足に2度蹴手繰りを仕掛けましたが、押し出しで敗れました。

中日新聞が伝えたこの一番は、決まり手が照ノ富士の押し出しで、蹴手繰りとしては記録に残っていません(出典:中日新聞)。

相撲以外の「けたぐり」|ポケモンの技名・政治の比喩・囲碁の用語

「けたぐり」は相撲の決まり手のほか、ゲームの技名、政治記事の比喩、囲碁の用語にも使われています。

辞典は名詞「けたぐり」を、相撲の決まり手という1つの意味でしか載せていません。デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典・ブリタニカのどれにも、「人を蹴落とす」のような比喩の意味はありません。

分野使われ方出典
相撲決まり手八十二手の掛け手の1つ日本相撲協会
ゲーム『ポケットモンスター』シリーズに同じ名前の技があるゲームの攻略サイト
政治の比喩政治評論家の比喩「なぜか『蹴手繰り(けたぐり)』を仕掛けて空振りしてしまい」AERA DIGITAL(2023年8月26日)
国際政治の見出し「搦め手、けたぐり、なんでもありの国際政治」Yahoo!ニュース エキスパート(2014年8月31日)
囲碁用語「ケタグリ」。相手の一瞬の隙を突いて勝負を逆転させること囲碁用語の解説ページ
映画1935年公開の松竹の時代劇『蹴手繰り音頭』(原作・長谷川伸)松竹 映画作品データベース
当サイトが確認した使われ方。辞典は名詞「けたぐり」を相撲の意味でしか載せていない

ポケモンの技名が相撲の決まり手から来ているかどうかを書いた資料は、当サイトは見つけられませんでした。確かめられるのは、同じ名前の技がある、というところまでです。

蹴手繰りについてよくある質問

Q. 蹴手繰りと蹴返しはどう見分けますか

A. 協会の説明で、蹴返しだけが「足首」を「足の裏」で蹴ると書いている点が手がかりです。協会の蹴手繰りのページには、足を外へ払われた力士が前のめりに手をつきかける稽古場の写真が1枚載っていて、相手が前に落ちる形を確かめられます。

Q. 蹴手繰りは反則ではないのですか

A. 反則ではありません。協会の審判規則の禁じ手8項目で蹴りに関わるのは「胸、腹を蹴ること」だけです。子ども向けの「おしえて八十二手」も、禁じ手の7番目を「胸・腹をけること」としています。足を内側から外へ蹴る蹴手繰りは、決まり手八十二手の掛け手に入っています。

Q. 蹴手繰りの読み方と英語は

A. 「けたぐり」と読み、協会の子ども向けページのふりがなも「けたぐり」です。意味を訳した英語では、英語版Wikipediaの「Kimarite」の項が pulling inside ankle sweep としています。協会の英語版の取組データはローマ字表記ですが、令和8年9月場所に蹴手繰りが0番だったため、協会の綴りは確かめられていません。

Q. 最近、蹴手繰りで決まった取組はありますか

A. 相撲レファレンスの記録では、全階級で最後に決まったのは2024年7月場所12日目の三段目、須山の勝ちです。十両以上の最後は2021年11月場所の朝乃若、幕内の最後は2017年5月場所の荒鷲です。2025年以降は全階級で0番でです。

Q. 白鵬や舞の海は蹴手繰りを使いましたか

A. 相撲レファレンスの全階級の記録では、白鵬と舞の海が蹴手繰りで勝った取組は0番です。千代の富士は十両での1番だけです。白鵬は時天空を追悼して足技のキレを評価した側で、舞の海が得意にした足技は切り返しで、幕内で33番を記録しています。

Q. 蹴手繰りは相撲の四十八手の一つですか

A. 協会が定める「決まり手八十二手」の1つです。世界大百科事典は、四十八手は古くは「数多い手」という意味で、決まった数の手ではないと説明しています。82手になった年は、ブリタニカが2000年、Yahoo!ニュース エキスパートの記事が2001年1月と食い違うため、当サイトは年を決めていません。

まとめ|蹴手繰りは、立合いの一瞬に足を蹴って前に落とす掛け手

蹴手繰りとは、立合いの瞬間に体を開き、相手の足を内側から外へ蹴って、肩を叩くか手をたぐって前に倒す掛け手です。

協会の集計では全階級192,672番のうち23回・59位で、蹴返しの約5分の1です。蹴返しとは「足首を足の裏で」蹴るかどうかで分かれます。幕内の最後は2017年、全階級の最後は2024年7月で、2025年以降は1番も出ていません。

決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】に、同じ掛け手は内掛け・足取り・切り返しにまとめています。

協会の数字と取組の記録を並べると、蹴手繰りは決まり手の名前としては残りながら、ここ数年は土俵でほぼ見られなくなった技です。立合いの一瞬にしか使えず、外せば一気に持っていかれるという記者の説明と、記録の少なさは食い違っていません。

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