内無双(うちむそう)とは、相手の内ももを下から手で払い、体をひねって倒す相撲の決まり手です。日本相撲協会が定める決まり手八十二手のうち、左右にひねって崩す技を集めた「捻り手」19手の1つに数えられます。協会の集計では、平成25年1月場所から令和8年7月場所千秋楽までの190,450番のうち59回、全体の0.03%で47位。めったに出ない技ですが、2025年は幕内で5番決まり、うち4番を安青錦が決めました。この記事では、公式の定義、倒れる仕組み、外無双や似た技との見分け方、数字の中身と名手を出典付きで整理します。
この記事でわかること
- 内無双の公式の定義と、捻り手19手のなかでの位置
- 払う手とひねる体で相手が倒れる流れを3コマで示した図
- 外無双との違い。払う場所と、同じ期間で59回対0回という差
- 下手捻り・ずぶねり・とったり・渡し込みとの見分け方の表と判定図
- 2025年に幕内で決まった5番と、安青錦・琴光喜・二子岳ら名手の記録
- 「無双」の辞書の語義と、技名の由来が辞典に書かれていないこと
内無双とは|相手の内ももを下から払い、体をひねって倒す捻り手
内無双とは、相手の内ももを下から手で払い、体をひねって相手を倒す決まり手です。
日本相撲協会の公式サイトは、内無双を次のように説明しています。
相手の内ももを下から手で払い、体をひねって相手を倒して勝ちます。相手の膝の外側から払うようにするのが外無双です!
出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 内無双」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/51/
前半が内無双の説明、後半が外無双との区別です。相撲の内無双を理解する鍵は、「払う」と「ひねる」が1つの文でつながっていることです。
公式の説明は「払う」と「ひねる」の2つの動作でできている
協会の説明文は、手で内ももを払う動作と、体をひねる動作の2つで内無双を定めています。
払う箇所は「内もも」、払う向きは「下から」、倒し方は「体をひねって」です。協会がこども向けに作った「おしえて八十二手」の解説画像では、同じ技を「体を捻って相手を肩口から横転させて勝ちます」と書いています(出典:日本相撲協会「ハッキヨイ!せきトリくん おしえて八十二手」 https://www.sumo.or.jp/IrohaKnowledge/sekitorikun82/ )。
「2つの動作」は公式の説明文を当サイトが読み解いたもので、協会の判定基準ではありません。技名は審判部が決めます。
捻り手19手の7番目に置かれている
内無双は、左右にひねって崩す技を集めた捻り手19手のうち、協会の一覧で7番目に並んでいます。
82手は基本技7・投げ手13・掛け手18・反り手6・捻り手19・特殊技19の6系統です(一覧の並びを当サイトで数えたもの)。その外側に、腰砕けや勇み足などの勝負結果(非技)5つが置かれています。決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】にまとめています。捻り手19手の並びは次のとおりです。
| 並び | 技名 | 並び | 技名 |
|---|---|---|---|
| 1 | 突き落とし | 11 | 網打ち |
| 2 | 巻き落とし | 12 | 鯖折り |
| 3 | とったり | 13 | 波離間投げ |
| 4 | 逆取ったり | 14 | 大逆手 |
| 5 | 肩すかし | 15 | 腕捻り |
| 6 | 外無双 | 16 | 合掌捻り |
| 7 | 内無双 | 17 | 徳利投げ |
| 8 | 頭捻り(ずぶねり) | 18 | 首捻り |
| 9 | 上手捻り | 19 | 小手捻り |
| 10 | 下手捻り | ― | ― |
協会は82手に通し番号を振っていません。URLの detail/51 は一覧の並びに振られたIDです。こども向けページの「捻り手⑦」も、82手の通し番号ではなく系統のなかでの順番です。
辞典は「手の甲」や「手のひら」をももの内側に当てると書いている
国語辞典は、手の甲や手のひらを相手のももや膝の内側に当てて払い、反対側へひねり倒す技と説明しています。
デジタル大辞泉は、上手を伸ばして手の甲で相手のももを内側から払い上げ、反対側からひねり倒す技としています。精選版日本国語大辞典は、差し手を抜いてその手を相手の内股に当ててすくい、体を押しつけながらひねり倒す技と説明します。ブリタニカ国際大百科事典は、上手側の手のひらを相手の膝の内側に当てて下手側へひねり倒し、まれに下手側の手を膝に当てて上手側へひねることもあると書きます(いずれもコトバンク所収 https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E7%84%A1%E5%8F%8C-176836 )。
ブリタニカは、形の似た「さまた(叉股)返し」は足を取る技で、内無双は手を当てるだけのひねり技だと区別しています。表現は揺れても「内側から当てて、ひねって倒す」骨格は3つとも同じです。
内無双はなぜ決まるのか|払う手とひねる体が同時に働く
公式の説明文を読むと、片足の支えを払う手と上体をひねる動きが同時に働くことが要点です。
片足の支えを払い、上体を反対へ回す
払う手が相手の片足の踏ん張りを外し、そこへ体のひねりが加わることで、相手は横へ転がります。
以下は協会と辞典の説明を当サイトが読み解いたものです。組んだ相手は両足で体を支えています。片方の内ももを下から払われるとその足は土俵を踏めなくなり、そこで体をひねられると、上体は支えの無い側へ回されて「肩口から横転」します。
2025年5月場所5日目の安青錦と翠富士の一番について、ベースボール・マガジン社は、左下手で捻ると同時に右手で相手の左足を内側から払ったと書いています。安青錦自身はレスリングの足取りの応用だと話しています(出典:ベースボール・マガジン社「鮮やか内無双!」2025年5月15日 https://www.bbm-japan.com/article/detail/60712 )。
「なぜ決まるのか」という質問が検索に残っている
「内無双ってなんで決まるんですか?」という質問は、2025年11月23日にもQ&Aサイトへ投稿されています。
当サイトが2026年9月13日に「内無双」を検索したところ、Googleの「他の人はこちらも質問」に「内無双はなぜ決まるのですか?」が表示され、Yahoo!知恵袋には「引き落としの内側バージョンでしょうか」「膝の内側をチョップで当てるのですか」といった質問が並んでいました(出典:Yahoo!知恵袋 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14322544139 )。
稽古場でやらない安青錦、稽古場でよくやる高安
内無双を本場所で決めた2人は、稽古場での扱いについて正反対のことを話しています。
安青錦は2025年5月、「稽古場ではケガをしやすいので。危ないからやらない。本場所では勝たなきゃいけないから」と話しました(出典:ベースボール・マガジン社 2025年5月15日 https://www.bbm-japan.com/article/detail/60712 )。一方、2025年11月場所3日目に大関琴櫻を内無双で破った高安は、「内無双は本場所でやった記憶はないが、稽古場ではよくやっている」と話しています(出典:スポーツ報知 2025年11月11日 https://hochi.news/articles/20251111-OHT1T51298.html )。
内無双と外無双の違い|払うのが内ももか、膝の外側か
相手の内ももを下から払えば内無双、膝の外側から払えば外無双で、分かれ目は払う場所です。
払う場所と、払う手が違う
協会の説明では、外無双は差している手を抜き、その手で相手の膝の外側を払ってひねり倒す技です。
外無双の公式の説明は「差している右(左)手を抜き、その手で相手の右(左)ひざの外側を払いながら、左(右)手で相手の右(左)差し手を抱えてひねり倒して勝ちます!」です(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 外無双」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/50/ )。
| 項目 | 内無双 | 外無双 |
|---|---|---|
| 系統 | 捻り手 | 捻り手 |
| 払う場所 | 相手の内もも(下から) | 相手の膝の外側 |
| 手の使い方(協会の説明) | 「手で」払う | 差し手を抜いて払い、もう一方で差し手を抱える |
| 協会の集計(190,450番) | 59回・0.03%・47位 | 0回・0%・87位 |
| 幕内の勝ち(相撲レファレンスを当サイト集計) | 157番(1931年5月場所〜2025年11月場所) | 20番 |
同じ期間で内無双59回、外無双は0回
協会の集計では、190,450番のうち内無双が59回、外無双は0回で、外無双は一覧の87位に置かれています。
外無双は0回の技として最下位の87位に並び、詳細ページには「多い力士」の欄もありません(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/show/ )。当サイトが相撲レファレンスの幕内の記録を数えたところでも、内無双の勝ちは157番、外無双は20番でした。Wikipediaは、関取の外無双は平成10年11月場所の旭鷲山を最後に出ていないとしています(出典:Wikipedia「外無双」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E7%84%A1%E5%8F%8C )。
内無双と間違えやすい技|下手捻り・ずぶねり・とったり・渡し込み
どこに手を当てて倒すかで分かれます。脚を手で払えば内無双で、まわしや腕、頭を使えば別の技です。
協会の説明文から、手を当てる場所と倒し方を並べると次のとおりです。
| 技名 | 系統 | 協会の説明の要点 | 順位・回数 |
|---|---|---|---|
| 内無双 | 捻り手 | 相手の内ももを下から手で払い、体をひねる | 47位・59回 |
| 外無双 | 捻り手 | 差し手を抜いて膝の外側を払い、差し手を抱えてひねる | 87位・0回 |
| 頭捻り(ずぶねり) | 捻り手 | 肩か胸に頭をつけ、手と首を同時にひねる | 46位・61回 |
| 下手捻り | 捻り手 | 差し手でまわしを引き、下手のほうからひねる | 26位・362回 |
| とったり | 捻り手 | 相手の片腕を両手で抱え取り、体を開いて手前にひねる | 25位・373回 |
| 渡し込み | 掛け手 | ひざか太ももを片手で外側から抱え込み、もう一方の手で押し込む | 34位・215回 |
| 内掛け | 掛け手 | 自分の足を相手の足の内側に掛けて引き、仰向けに倒す | 36位・147回 |
下手捻りは、まわしを取った下手からひねる
下手捻りは差し手でまわしを引き、その下手の側からひねる技で、協会の説明に脚を払う動作はありません。
下手捻りの公式の説明は「差し手でまわしを引き、まわしを取った下手のほうから、ひねって相手を倒して勝ちます。上手投げとの合わせ技になる場合が多いです!」です(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 下手捻り」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/54/ )。安青錦の内無双のように、内無双もまわしを取ったまま下手からひねることがあります。分けるのは、もう一方の手が脚を払っているかどうかです。
ずぶねりは、頭を相手につけて手と首でひねる
頭捻り(ずぶねり)は相手の肩か胸に頭をつけ、手と首を同時にひねって倒す技で、46位61回です。
協会の説明は「相手の肩か胸に頭をつけて食い下がり、相手の差し手を抱え込むか、ひじをつかんで手と首を同時に捻りながら倒す」で、名前は「頭ひねり」がなまったものだと書いています(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 頭捻り」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/52/ )。ひねる力を頭と首で生むのが頭捻り、脚を払う手で生むのが内無双です。
とったり・渡し込み・内掛けは、腕や脚を抱える・掛ける
とったりは相手の腕を抱え、渡し込みは膝や太ももを抱え、内掛けは足を掛けます。内無双は手で払います。
とったりは、宇良が同じ期間に21回決めて力士別の1位に立つ技で、相手の片腕を両手で抱え取ってひねります(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 とったり」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/47/ )。渡し込みは「相手のひざか太ももを片手で外側から抱え込んで内へ引き」とあり、脚を外側から抱え込む点が内無双と違います(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手 渡し込み」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/detail/29/ )。内掛けは手ではなく自分の足を相手の足の内側に掛ける掛け手です。
内無双はどれくらい出るのか|190,450番のうち59回・0.03%
協会の集計では、平成25年1月場所から令和8年7月場所までの190,450番で59回、全体の0.03%です。
比べると、最も多い押し出しは47,936回・25.17%、2位の寄り切りは47,473回・24.93%です(出典:日本相撲協会「決まり手八十二手」 https://www.sumo.or.jp/Kimarite/show/ )。内無双はおよそ3,200番に1番の計算です。
分母は全階級。協会の「多い力士」は幕下経験者が上位
190,450番について協会は対象の階級を書いておらず、多い力士の上位には幕下で引退した力士が並びます。
幕内の取組は1場所およそ300番で、約81場所でも2.5万番ほどです。190,450番は十両・幕下以下を含めた数と読むのが妥当、というのが当サイトの判断です。
| 力士 | 回数 | 協会の決まり手ページの表示 |
|---|---|---|
| 南海力 | 9 | 元幕下十二枚目(令和4年3月場所引退) |
| 濱栄光 | 5 | 元幕下三十八枚目(令和2年1月場所引退) |
| 彩の湖 | 5 | 元幕下十四枚目(令和3年9月場所引退) |
| 安青錦 | 5 | 西関脇(※) |
| 紫雷 | 4 | 元十両二枚目(令和8年3月場所引退) |
| 朝志雄 | 3 | 西序二段十四枚目 |
| 丹治 | 2 | 東幕下筆頭 |
| 翠富士 | 2 | 東十両八枚目(※) |
幕内では2016〜2022年が0番、2025年は5番
相撲レファレンスの幕内の記録を当サイトが数えると、2016年から2022年は0番、2025年は5番でした。
以下は相撲レファレンス(sumodb)の幕内の記録を当サイトが年ごとに数えた数字です。2010年以降は、2010年1番、2011年1番、2012年2番、2014年1番、2015年1番のあと、2016年から2022年までの7年間は0番。2023年1月場所5日目に翠富士が妙義龍を破った1番をはさみ、2025年に5番が出ています(出典:相撲レファレンス https://sumodb.sumogames.de/Query_bout.aspx?show_form=0&m=on&kimarite=57&onlyw1=on )。
ベースボール・マガジン社の「幕内では2年4カ月ぶり」(2025年5月15日)とも一致します。当サイトがYahoo!スポーツナビで2025年9月場所〜2026年7月場所の90日分を確認すると、幕内の内無双は2025年11月場所の2番だけで、2026年の場所は0番でした(出典:Yahoo!スポーツナビ 取組結果 https://sports.yahoo.co.jp/sumo/torikumi/202511/15 )。
内無双の名手|安青錦・高安、そして琴光喜・二子岳
近年は安青錦が2025年に幕内で4番決め、幕内の通算記録では二子岳と琴光喜が15番ずつで並びます。
2025年の幕内5番のうち4番が安青錦
2025年に幕内で決まった内無双は5番で、安青錦が4番、高安が1番。5番のうち4番は、敗れた側が大関か関脇でした。
| 日付 | 場所・日目 | 勝ち(当時の地位) | 負け(当時の地位) | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年5月15日 | 夏場所5日目 | 安青錦(東前頭九枚目) | 翠富士(西前頭九枚目) | ベースボール・マガジン社 https://www.bbm-japan.com/article/detail/60712 |
| 2025年7月13日 | 名古屋場所初日 | 安青錦(東前頭筆頭) | 琴櫻(東大関) | 中日スポーツ https://www.chunichi.co.jp/article/1099105 |
| 2025年7月17日 | 名古屋場所5日目 | 安青錦(東前頭筆頭) | 霧島(西関脇) | 中日スポーツ https://www.chunichi.co.jp/article/1101508 |
| 2025年11月11日 | 九州場所3日目 | 高安(西小結) | 琴櫻(東大関) | 日刊スポーツ https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/202511110001154.html |
| 2025年11月23日 | 九州場所千秋楽 | 安青錦(東関脇) | 琴櫻(東大関) | 読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/sports/sumo/20251123-OYT1T50066/ |
安青錦は2025年7月場所初日、大関琴櫻を内無双で破って大関戦の初白星を挙げ、「子どものときからやってるんで」と話しました(出典:中日スポーツ 2025年7月13日 https://www.chunichi.co.jp/article/1099105 )。11月場所千秋楽には再び琴櫻を内無双で下して12勝3敗とし、優勝決定戦で豊昇龍を破って初優勝しています(出典:読売新聞 2025年11月23日 https://www.yomiuri.co.jp/sports/sumo/20251123-OYT1T50066/ )。
安青錦は令和8年九月場所を大関で迎えました。2026年7月場所の優勝は名古屋場所千秋楽の記事に、九月場所の全体の地位は最新の番付にまとめています。
白鵬は琴光喜の映像を見て鶴竜に決めた
白鵬は2012年7月場所10日目に大関鶴竜を内無双で破り、場所前に琴光喜の映像を見ていたと報じられました。
スポーツニッポンによると、白鵬は場所前に、元大関琴光喜が内無双を仕掛ける動画を見ていました。取組後には「琴光喜関はよくやっていたから」と話しています(出典:スポーツニッポン 2012年7月18日 https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2012/07/18/kiji/K20120718003703250.html )。相撲レファレンスの取組記録にも、この一番と、2014年1月場所14日目に白鵬が大関琴奨菊を内無双で破った一番が載っています(出典:相撲レファレンス https://sumodb.sumogames.de/Query_bout.aspx?show_form=0&m=on&kimarite=57&onlyw1=on&shikona1=Hakuho )。
手本になった琴光喜は、2000年九州場所14日目、西前頭九枚目で大関雅山を内無双で破りました(相撲レファレンスの取組記録でも同じ)。時事通信の写真特集は、元小結舞の海もこの技を得意としたと書いています(出典:時事ドットコム https://www.jiji.com/jc/d4?p=tec110-jpp016547194&d=d4_cc )。
幕内の記録は二子岳と琴光喜が15番
相撲レファレンスの幕内の記録を数えると、内無双の勝ちは二子岳と琴光喜が15番、増位山が14番で上位に並びます。
| 順 | 力士 | 幕内での内無双の勝ち |
|---|---|---|
| 1 | 二子岳 | 15 |
| 1 | 琴光喜 | 15 |
| 3 | 増位山 | 14 |
| 4 | 旭國 | 9 |
| 5 | 舞の海 | 8 |
| 6 | 琴ノ若 | 7 |
| 7 | 久光錦・旭豊 | 6 |
| 9 | 若潮・智乃花 | 5 |
| 11 | 旭鷲山・安美錦・安青錦 | 4 |
「無双」という名前|辞典に技名の由来は書かれていない
辞典は「無双」に並ぶものがない意味と相撲の技の意味を載せますが、技名になった理由は書いていません。
辞典に載る「無双」の語義は3つ
デジタル大辞泉は「無双」に、並ぶものがない、衣服の表裏を同じ布で仕立てる、相撲の技の3つの語義を載せています。
3つ目の相撲の語義では、相手の差し手を抱え込み、手を相手の内股か外股に当てて反対側からひねり倒す技とし、内無双と外無双があると書きます。用例には「無双を切る」が挙げられています(出典:デジタル大辞泉「無双」コトバンク所収 https://kotobank.jp/word/%E7%84%A1%E5%8F%8C-618609 )。
当サイトが辞典6点と協会の解説、Wikipediaを確認した範囲では、「並ぶものがない」の意味や「無双袖」と技名を結びつけた記述は見つからず、この記事では由来を断定しません。
出典は1763年の古今相撲大全までさかのぼる
精選版日本国語大辞典は「内無双」の出典に『古今相撲大全』(1763年)を挙げており、江戸中期の相撲書に名が見えます。
外無双の出典は『相撲講話』(1919年)で、別名を「高無双」としています(出典:精選版日本国語大辞典「外無双」コトバンク所収 https://kotobank.jp/word/%E5%A4%96%E7%84%A1%E5%8F%8C-177338 )。
決まり手は昭和30年(1955年)に68手、昭和35年(1960年)に70手、平成13年(2001年)に82手と勝負結果5になりました(出典:日本相撲協会 相撲博物館 展示解説 https://www.sumo.or.jp/KokugikanSumoMuseumDisplay/past?year=2014 )。内無双は2001年に追加された12手には入っておらず、相撲レファレンスでは1961年11月場所から幕内の記録が確認できます。1955年の68手に含まれていたかを示す一次資料には、当サイトは当たれていません。
内無双についてよくある質問
Q. 内無双は「引き落とし」の内側版ですか
A. いいえ、系統から違う技です。内無双は捻り手で、相手の内ももを払ってひねり倒します。引き落としは特殊技で、相手の腕や肩、前まわしを自分の手前に引いて前へ落とします。脚を払う動作があるのは内無双だけです。
Q. 内無双は相手の膝をチョップで打つ技ですか
A. 打つのではなく払います。協会は「内ももを下から手で払い」、デジタル大辞泉は手の甲で「払い上げ」、ブリタニカは手のひらを膝の内側に「当て」と書いており、叩く動作としては説明されていません。正規の決まり手で、反則ではありません。
Q. 外無双はいまも見られますか
A. 平成25年1月場所以降の協会の集計では0回です。82手には残っているため、決まれば外無双として記録されます。なお「高無双」は、精選版日本国語大辞典が外無双の別名とする一方、Wikipediaは82手に含まれない形として説明しており、資料によって扱いが分かれます。
Q. 内無双は左右どちらの手でも掛けられますか
A. 掛けられます。協会の説明は左右を指定していません。中日スポーツによると、安青錦は2025年7月場所で初日は左から、5日目は右から内無双を決め、ベースボール・マガジン社の取材には「どっちもできますよ」と話しています。ブリタニカ国際大百科事典も、まれに下手側の手を膝に当てて上手側へひねる形があると書いています。
Q. 内無双の読み方と英語表記は
A. 読み方は「うちむそう」です。協会の公式通販サイトの英語ページでは「Uchimuso」と書かれています。英語版Wikipediaは「Uchimusō」と表記しています。
Q. 十両や幕下以下でも内無双は出ますか
A. 出ます。協会が挙げる「内無双の多い力士」8人の上位3人は、いずれも幕下で引退した力士です。相撲レファレンスの記録では、十両での内無双の勝ちは106番ありました。2024年11月場所13日目には、新十両の安青錦が十両で大奄美を内無双で破っています(西日本新聞の写真ギャラリーとYahoo!スポーツナビの取組結果で確認)。
まとめ|内無双は、払う手とひねる体がそろったときに決まる
内無双とは、相手の内ももを下から手で払い、体をひねって倒す、捻り手19手の1つです。
膝の外側を払えば外無双、まわしを取った下手からひねるだけなら下手捻り、頭をつけてひねれば頭捻り(ずぶねり)です。頻度は全階級190,450番のうち59回・0.03%、外無双は0回。幕内では2016〜2022年に出なかった技が2025年に5番決まり、うち4番を安青錦が決めました。「無双」の由来は辞典にも書かれていません。
決まり手の全体像は相撲の決まり手一覧【全82手+非技5】に、似た字を持つ足技は内掛けに、引く技との違いは引き落としにまとめています。
内無双は、押し込む力で勝負を決める技ではなく、相手の足が土俵を踏む支えを手で外す技です。そうした技が82手のなかに名を持って残っていることは、相撲の奥行きを静かに伝えています。

