大相撲の巡業は、本場所の合間に力士一行が全国各地をまわり、その土地で一日限りの相撲を披露する興行です。番付を争う本場所とは違い、力士との距離がぐっと近く、初っ切りやちびっこ相撲、握手会など、本場所では味わえない楽しみが詰まっています。この記事では、巡業とは何かという基本から、本場所との違い、一日の流れ、見どころ、チケットの取り方までを、初めての方にもわかりやすく解説します。
📖 この記事でわかること
- 巡業とは何か/本場所との違い(「花相撲」とは)
- 年4回(春・夏・秋・冬)の時期と、巡る地域の目安
- 巡業の一日の流れと見どころ(初っ切り・ちびっこ相撲・ふれあい)
- チケットの取り方と、観戦の準備・マナー
大相撲の「巡業」とは?本場所との違いをわかりやすく解説
巡業とは、本場所の合間に力士一行が全国各地を巡り、一日限りで相撲を披露する興行のことです。年4回(春・夏・秋・冬)行われ、番付を争う本場所と違って勝敗が番付に直接ひびかない「花相撲」にあたり、相撲の普及と地方のファンとの交流を目的としています。
本場所は、両国・大阪・名古屋・福岡の4都市で年6回開かれる公式戦で、力士はここでの成績によって番付(地位)が上下します。いわば真剣勝負の場です。一方の巡業は、その本場所を観に行けない地方の人たちに相撲を届けるための興行で、日本相撲協会は「本場所の合間の期間に地方を巡回し、相撲を公開して国技相撲の普及を図る」ことを巡業の目的として掲げています。
勝敗が番付に直接影響しないため、力士も怪我をしないよう配慮しながら土俵に上がり、全体に和やかな空気が流れます。だからこそ握手やサイン、写真をお願いしやすく、力士の素顔や人柄にふれられるのが巡業ならではの魅力です。相撲そのものの歴史や成り立ちについては、相撲とは?ルール・歴史・魅力をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
| 項目 | 本場所 | 巡業 |
|---|---|---|
| 開催 | 年6回・両国/大阪/名古屋/福岡の4都市 | 年4回(春夏秋冬)・全国各地を巡回 |
| 番付への影響 | 成績が番付・地位に直結する真剣勝負 | 勝敗は番付に直接ひびかないとされる(花相撲) |
| 目的 | 力士の地位を決める公式戦 | 相撲の普及・地方のファンとの交流 |
| 雰囲気 | 張り詰めた緊張感 | 和やかで、ファンサービスが中心 |
| 力士との距離 | 遠い(観戦が中心) | 近い(握手・サイン・写真もお願いしやすい) |
| 主な見どころ | 優勝争い・熱戦 | 初っ切り・相撲甚句・ちびっこ相撲・朝稽古 |
巡業の仕組みと運営|誰が参加し、誰が支えるのか
巡業には、原則としてすべての幕内力士が参加します。幕内力士は特段の事情がない限り参加が義務とされ、怪我などで欠員が出た場合は十両から補われます。幕下以下の力士は全員ではなく、関取の付き人や、その土地の出身である「ご当所力士」、初っ切りや相撲甚句を演じる力士など、役割のある一部が同行します。
運営は、日本相撲協会内に置かれた「巡業部」と、開催地ごとの「勧進元(かんじんもと)」が担います。勧進元とは、その土地で興行を開きたい主催者のことで、協会と契約を結び、契約金を払って興行の権利を得ます。土俵は本場所と同じように築かれますが、地元の協力者も加わって設営されることが多く、開催地の人々の力で一日の相撲が支えられています。
巡業は年4回|春・夏・秋・冬の時期と主な地域
現在の巡業は、本場所の合間を縫って年4回行われています。季節ごとに巡る地域のおおよその傾向が決まっており、春は中部から近畿、夏は北海道から東北、秋は関東から中部、冬は九州から沖縄が中心です。下の表は、季節ごとの時期の目安と、過去に巡業が行われた土地の例をまとめたものです。
| 巡業 | 時期の目安 | 主に巡る地域 | 過去の開催地の例 |
|---|---|---|---|
| 春巡業 | 3月場所後(4月ごろ) | 中部・北陸〜近畿・四国 | 岐阜・静岡・富山・金沢・高松 など |
| 夏巡業 | 7月場所後(8月ごろ) | 北海道〜東北 | 札幌・仙台 など |
| 秋巡業 | 9月場所後(10月ごろ) | 関東〜中部 | 関東・東海の各地 など |
| 冬巡業 | 11月場所後(12月ごろ) | 九州・沖縄 | 福岡など九州各地 など |
開催地や日程は毎年変わり、その年によって巡る土地も変わります。行きたい地域で巡業があるかどうかは、必ず日本相撲協会の公式サイトや地元の主催者が出す最新情報で確認してください。なお、本場所の日程・会場については大相撲の場所とチケット完全ガイドで詳しく解説しています。
巡業の一日の流れ|朝稽古から弓取式まで
巡業は、午前が稽古、午後が取組という二部構成が基本です。午前中は力士の申し合い稽古が中心で、ふだん本場所では見られない稽古の様子を間近で見られます。午後になると幕下から幕内までの取組が進み、その合間に初っ切りや相撲甚句といった出し物が入り、最後は弓取式で締めくくられます。
力士の申し合い稽古、関取との握手会、子どもたちとのふれあい(ちびっこ相撲)。ふだん見られない稽古を間近で楽しめます。
幕下から幕内までの取組、土俵入り、初っ切りや相撲甚句などの出し物、そして弓取式で終了します。
下のタイムテーブルは一例です。開始時刻や進行は開催地によって異なりますので、目安としてご覧ください。朝の稽古について詳しくは相撲の稽古とは?種類・内容・朝稽古の流れもご参考ください。
| 時刻(目安) | おもな内容 |
|---|---|
| 8:00ごろ | 開場・寄せ太鼓、幕下以下の稽古開始 |
| 8:30ごろ | 十両の申し合い稽古/関取との握手会 |
| 9:30ごろ | 幕内力士の申し合い稽古 |
| 10:30ごろ | ちびっこ相撲(子どもたちと力士のふれあい) |
| 11:00ごろ | 取組開始(幕下以下)。合間に初っ切り・相撲甚句・髪結い実演・太鼓打分などの出し物 |
| 12:30ごろ | 十両土俵入り〜十両の取組 |
| 13:30ごろ | 横綱土俵入り |
| 13:50ごろ | 幕内の取組 |
| 15:00ごろ | 弓取式で終了 |
巡業ならではの見どころ|初っ切り・相撲甚句・ちびっこ相撲
巡業には、本場所では見られない「出し物」がいくつも組み込まれています。開催地の主催者が内容を選ぶため、その土地ごとに顔ぶれは変わりますが、代表的なものを紹介します。
初っ切り(しょっきり)は、幕下の力士が相撲の禁じ手(反則)を実演で見せながら、相撲のルールを分かりやすく伝える伝統的な演目です。目や口を突く、髷をつかむといった反則を面白おかしく演じるため笑いも起きますが、本来のねらいは「やってはいけない技」を観客に教えることにあります。相撲を初めて見る人にとって、ルールを楽しく学べる時間です。
相撲甚句(すもうじんく)は、七五調の節回しにその土地の名所や名物を織り込んで唄う、民謡形式の演唱です。髪結い実演では、床山(とこやま)が関取の象徴である大銀杏(おおいちょう)を結い上げる過程を、20〜30分ほどかけて見せてくれます。太鼓打分は、呼出(よびだし)が櫓太鼓の技を披露するもので、いずれも相撲を支える裏方の技を知る貴重な機会です。
ちびっこ相撲は、子どもたちが土俵に上がり、本物の力士と相撲を取ったり抱き上げてもらったりするふれあいの企画で、家族連れに特に喜ばれています。力士が近くを歩き、握手やサインに気さくに応じてくれる場面も多く、大きな体と優しい所作のギャップに、応援したくなる人も少なくありません。サインを上手にもらうコツは大相撲の巡業でサインをもらう方法|タイミング・マナー・持ち物にまとめています。
巡業の歴史と豆知識|「勧進相撲」から続く伝統
地方巡業のルーツは、江戸時代の「勧進相撲(かんじんずもう)」にさかのぼるとされます。勧進相撲とは、もともと寺社の建立や修繕の資金を集めるために行われた相撲興行のことで、力士が各地をまわって相撲を見せる形が、現在の巡業へとつながっていきました。運営者を「勧進元」と呼ぶのも、その名残です。
その長い歴史のなかでは、困難な時期もありました。近年でも、2011年には不祥事の影響で巡業が中止となり、2020年から2021年にかけては新型コロナウイルスの感染拡大で見合わされ、2022年の夏巡業で3年ぶりに再開されています。それでも地方を巡り相撲を届ける伝統は、その都度立て直され、守られてきました。
巡業を地元に呼ぶ勧進元は、会場の手配から集客まで多くの準備を重ねます。大相撲を身近に呼べる機会は地域にとって貴重で、まちのにぎわいづくりや、次の世代のファンを育てる場にもなっています。土地の人々の熱意があって初めて、力士一行はその地に迎えられるのです。稽古を公開する催しとしては、テレビ番組と連動したがっぷり総見とは?稽古総見をわかりやすく解説もあわせて知っておくと、稽古を見る楽しみが広がります。
巡業のチケットの取り方と観戦準備【手順】
巡業のチケットは、本場所のように全国一律の窓口があるわけではなく、開催地ごとの主催者(勧進元・地元の実行委員会など)が扱います。そのため販売方法や発売日は土地によって異なります。次の手順で準備を進めるとスムーズです。
日本相撲協会の公式情報や地元の主催者の告知で、行ける巡業を探します。
プレイガイド、地元の実行委員会、電話予約など、開催地ごとに方法が異なります。
席の種類・料金を確認して申し込みます。人気の巡業は早めに動くと安心です。
握手会や朝稽古は午前中が中心。ふれあいを楽しむなら早い時間の来場がおすすめです。
服装はカジュアルで問題ありませんが、清潔感のある装いを心がけると安心です。夏の巡業は屋内でも暑くなることがあるため、水分や扇子を用意しておくとよいでしょう。持ち物や服装の詳しい考え方は相撲観戦の服装・持ち物・マナー完全ガイドを参考にしてください。なお本場所のチケットの買い方は大相撲チケットの買い方完全ガイドで別に解説しています。
力士との距離が近いのが巡業の魅力ですが、力士は巡業中も次の本場所に向けて心身を整えているアスリートです。ふれあいを楽しみつつも、無理に何度も話しかけない、撮影のルールを守る、感謝の気持ちを伝えるといった節度を保つことが、力士への敬意にもつながります。
巡業に関するよくある質問(FAQ)
Q. 巡業と本場所は何が違うの?
A. 本場所は番付(地位)を争う公式戦で、両国・大阪・名古屋・福岡の4都市で年6回開かれます。巡業は本場所の合間に全国各地をまわる興行で、勝敗は番付に直接ひびかず、相撲の普及とファンとの交流が目的です。力士との距離が近く、和やかな雰囲気が特徴です。
Q. 巡業は年に何回、いつ行われるの?
A. 現在は年4回で、春(3月場所後)・夏(7月場所後)・秋(9月場所後)・冬(11月場所後)に行われます。春は中部〜近畿、夏は北海道〜東北、秋は関東〜中部、冬は九州〜沖縄が中心ですが、開催地や日程は毎年変わるため公式情報の確認が確実です。
Q. 巡業のチケットはどこで買えるの?
A. 開催地ごとの主催者(勧進元や地元の実行委員会)が扱い、プレイガイドや電話予約など販売方法は土地によって異なります。本場所のような一律の窓口はないため、各開催地の告知で発売日と購入方法を確認しましょう。人気の巡業は早めの申し込みが安心です。
Q. 横綱や人気力士も巡業に来るの?
A. 幕内力士は原則として参加が義務とされているため、横綱や人気力士も基本的に巡業に参加します。ただし、怪我や休場などの事情で参加しない場合もあります。誰が来るかは開催地の告知で案内されることが多いので、事前に確認するとよいでしょう。
Q. 握手やサインはもらえるの?
A. 巡業は力士との距離が近く、握手会が設けられたり、会場で気さくに応じてもらえたりする場面が多くあります。ただし力士も調整中の身ですので、タイミングやマナーへの配慮は必要です。もらい方のコツは「巡業でサインをもらう方法」の記事で詳しく解説しています。
Q. 服装や持ち物は何がいい?
A. 服装はカジュアルで構いませんが、清潔感のある装いが安心です。夏は屋内でも暑くなることがあるため、水分や扇子を用意しておくとよいでしょう。長時間の観戦になるので、動きやすい服装と、こまめな水分補給を心がけてください。
まとめ|巡業は相撲を身近に感じられる特別な一日
大相撲の巡業は、本場所の合間に力士一行が全国をまわり、その土地で相撲を届ける興行です。要点を振り返ります。
- 巡業は年4回(春・夏・秋・冬)行われる「花相撲」で、勝敗は番付に直接ひびかない
- 目的は相撲の普及と地方のファンとの交流。運営は協会の巡業部と地元の勧進元が担う
- 午前は稽古、午後は取組の二部構成。初っ切り・相撲甚句・ちびっこ相撲など出し物が豊富
- チケットは開催地ごとの主催者が扱うため、最新情報は公式や地元の告知で確認する
本場所の張り詰めた気とはまた違い、巡業には相撲が土地に根づいていく穏やかな時間が流れています。子どもを抱き上げる大きな手、握手に添えられる会釈、稽古で流す汗——そのひとつひとつに、勝負の外側にある力士の姿がにじみます。近くの土地で巡業があれば、ぜひ一度、その一日を味わってみてください。本場所の日程やチケットについては大相撲の場所とチケット完全ガイドもご覧ください。
