元横綱・白鵬翔氏(41)が2026年8月29日配信の自身のYouTubeチャンネル「相撲を、世界へ」で、相撲が五輪競技になるなら「絶対出ます」と語りました。この発言は「現役復帰」として広く報じられていますが、白鵬氏が想定しているのは大相撲の土俵ではありません。この記事では、発言の中身をそのまま確認したうえで、相撲とオリンピックの関係が制度としていまどこまで進んでいるのかを、報道と公開情報をもとに整理します。
📖 この記事でわかること
- 白鵬氏の「絶対出ます」が、大相撲への現役復帰を意味しないこと
- 「日本チャンピオンにならないといけない」という発言の位置づけ
- 白鵬氏が退職から国際相撲連盟の顧問になるまでの流れ
- 相撲がIOCの承認を受けていても五輪競技ではない理由
- 2028年ロサンゼルス五輪の追加競技に相撲が入っていないこと
- 五輪を目指す「競技としての相撲」と大相撲の違い
白鵬翔氏の「絶対出ます」とは?大相撲への現役復帰ではない
「絶対出ます」は相撲が五輪競技になった場合に選手として出る意思であり、大相撲への現役復帰ではありません。
白鵬氏は2021年9月に現役を引退し、その後2025年6月9日付で日本相撲協会を退職しています。協会に所属していない以上、大相撲の本場所に力士として出場する道は制度上ありません。今回の発言は、司会者の「相撲が五輪競技になったら出る可能性はある?」という問いに答えたものです。
報道各社の見出しでは「現役復帰」の語がかぎ括弧つきで使われていますが、文脈は一貫して五輪の話です。ここを取り違えると、以降の話が全部ずれます。
YouTube「相撲を、世界へ」で把瑠都氏と語った内容
白鵬氏は自身のYouTube「相撲を、世界へ」で元大関・把瑠都氏(41)と対談し、相撲の世界普及について語りました。
把瑠都氏は現役引退後、母国エストニアの相撲連盟会長となり、欧州相撲連盟と国際相撲連盟でも理事を務めています。対談で把瑠都氏は「今(ヨーロッパ)相撲連盟のメンバーは26か国。もっともっと、世界に広めていきたい」と述べました。
白鵬氏が「目指せオリンピック」と目標を掲げると、把瑠都氏は「相撲ってオリンピックのスポーツじゃないから。オリンピックに相撲が入れるように。我々の夢ですよね」とうなずいた、と東スポWEBは伝えています。つまり対談の主題は、二人の指導者としての普及活動であり、選手としての復帰そのものではありません。
「日本チャンピオンにならないといけない」発言の意味
白鵬氏が挙げた「日本チャンピオン」は本人が想定するハードルであり、決まった五輪代表の選考制度ではありません。
報道された発言はこうです。「出たいですね。でも、年齢が年齢ですからね。2人とも40歳になってますから。出るためには私が日本チャンピオン、把瑠都がエストニアチャンピオンにならないといけない。なので、ハードルが高いです」。そのうえで「オリンピック(競技)にするための何か糸口があるなら、絶対出ます」と続けています。
注意したいのは、この「日本チャンピオン」が制度として確定した条件ではないという点です。相撲は現時点で五輪競技ではなく、将来採用された場合の代表選考の方式も決まっていません。白鵬氏の言葉は、大相撲の横綱だったからといって自動的に代表になれるわけではない、という本人の認識を示したものと読むのが正確です。
Q. 白鵬氏は「必ず出る」と言い切ったのですか?
A. 条件つきです。「年齢が年齢」「ハードルが高い」と前置きしたうえで、五輪競技化への糸口があるなら出る、という言い方をしています。
なぜ白鵬氏がいま五輪競技化を語るのか|退職から国際相撲連盟顧問へ
白鵬氏は2025年6月に日本相撲協会を退職し、同年9月に国際相撲連盟の顧問へ就いたためです。
退職の経緯は、弟子の暴力事案による処分後に宮城野部屋が閉鎖され、処分解除の見通しが立たない中で2025年3月に退職を決断した、と時事通信は伝えています。会見では「世界相撲グランドスラム」構想を公表しました。部屋の閉鎖から吸収までの詳しい流れは、宮城野部屋が消滅——北青鵬暴力問題から2年、伊勢ケ浜部屋吸収の全経緯で整理しています。
幕内優勝45回という歴代最多の記録を残した力士が、協会の外側で相撲の国際普及に軸足を移した——今回の発言は、その延長線上にあります。時系列で並べると次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2021年9月 | 現役を引退。幕内優勝45回は歴代最多 |
| 2024年3月 | 弟子の暴力事案を受け、宮城野部屋が閉鎖される |
| 2025年3月 | 処分解除の見通しが立たない中で退職を決断(時事通信) |
| 2025年6月9日 | 日本相撲協会を退職。会見で「世界相撲グランドスラム」構想を公表 |
| 2025年9月12日 | バンコクの国際相撲連盟総会で顧問に就任(任期2年) |
| 2026年8月29日 | YouTube対談で「絶対出ます」と発言 |
協会の内側にいたころは語りにくかった構想を、外に出たことで前面に押し出せるようになった、という流れが読み取れます。
2025年9月、国際相撲連盟の顧問に就任(会長は豊田章男氏)
白鵬氏は2025年9月12日、バンコクで開かれた国際相撲連盟の総会で顧問に就任しました。任期は2年です。
同じ総会で、新会長にはトヨタ自動車会長の豊田章男氏が選ばれました。豊田氏は2025年6月に、アマチュア相撲を統括する日本相撲連盟の会長にも就任しています。元小結・旭鷲山も白鵬氏と並んで顧問に就き、把瑠都氏は理事を務めています。
ここで押さえておきたいのは、顧問という役職の性格です。報道によれば顧問に議決権はなく、執行部として組織の意思決定を担う立場ではありません。普及や対外的な発信に関与する役職と理解するのが正確です。白鵬氏の発言は、連盟としての公式な方針表明ではなく、あくまで本人の意欲として受け取るべきものです。
相撲は本当にオリンピック競技になるのか|IOC承認と五輪採用は別
相撲は現在オリンピック競技ではありません。国際相撲連盟がIOCの承認を受けたことと五輪採用は別の話です。
この記事でいちばん誤解されやすいのがここです。「相撲はIOCに認められている」という情報と「相撲は五輪競技ではない」という事実は、どちらも正しく、矛盾していません。前者は国際競技団体としての承認、後者は大会ごとの競技プログラムの話で、そもそも別の制度だからです。
相撲を五輪へ、という構想自体は今回が初めてではありません。国際相撲連盟は1992年12月10日に創設された組織で、オリンピックへの相撲の参加を目指して作られたとされています。つまり30年以上前から掲げられ続けている目標であり、白鵬氏の発言はその系譜の上にあります。
IOCに承認されていても、それだけで五輪種目にはならない
IOCによる国際競技連盟の承認は、その競技が自動的にオリンピック種目になることを意味しません。
国際競技連盟の承認は、その団体がIOCの認める国際的な統括組織として扱われるという話です。一方、ある競技が五輪で実施されるかどうかは、大会ごとの競技プログラムとして別に決まります。承認された団体の競技が数多くありながら、そのすべてが五輪で行われているわけではないのは、この二段構えのためです。
したがって「相撲はIOCに承認されている」という一文だけで、五輪入りが近いと読むことはできません。承認は入口であって、採用ではないという整理になります。
1998年の暫定承認から2018年まで|ワールドゲームズでの実績
国際相撲連盟は1998年に暫定承認を受け、2002年の取消と2004年の復活を経て2018年に至ったとされます。
公開されている記録では、IOCによる正式承認は2018年10月の理事会とされています。ただしこの経緯は一次資料での確認が取りづらく、本記事では公開情報にもとづく整理として扱います。承認の有無や時期を根拠に何かを断定する場面では、国際相撲連盟やIOCの公表資料に当たることをおすすめします。
五輪以外の国際総合大会では実績があります。ワールドゲームズでは2001年の秋田大会で公開競技として、2005年のデュースブルク大会で正式競技として実施されました。競技として国際大会を回す体制は、すでに一定の形になっているということです。
LA2028の追加5競技に相撲は入っていない
2028年ロサンゼルス五輪の追加5競技は野球・ソフトボールなどで、相撲は含まれていません。
LA2028の追加競技は、野球・ソフトボール、フラッグフットボール、クリケット、ラクロス、スカッシュの5つです。2023年10月のIOC総会で承認されました。相撲はこの中にありません。
つまり、白鵬氏が語る「オリンピック」は、少なくとも2028年の大会ではありません。それ以降の大会が対象になりますが、どの大会でどう扱われるかは決まっていない状態です。
| 項目 | 大相撲 | 競技としての相撲(国際相撲連盟系) |
|---|---|---|
| 統括団体 | 日本相撲協会 | 国際相撲連盟(国内は日本相撲連盟) |
| 位置づけ | 興行としての本場所 | 大会形式の競技スポーツ |
| 階級 | 体重別なし(番付で序列) | 体重別の階級を採用 |
| 女子競技 | 力士として本場所には出場しない | 女子の階級・国際大会がある |
| 国際大会 | 巡業・海外公演という形 | 世界選手権・ワールドゲームズ等 |
| 五輪との関係 | 対象外 | 五輪入りを目標に掲げている |
五輪に出るのは「大相撲」ではない|競技相撲との違い
五輪を目指しているのは国際相撲連盟が統括する競技としての相撲で、日本相撲協会の大相撲とは別の組織です。
上の表のとおり、両者は統括団体から階級の考え方まで違います。大相撲は番付という序列で組まれる興行で、体重別の階級はありません。一方、国際大会の相撲は体重別の階級制で、女子の競技も行われています。仮に相撲が五輪競技になったとしても、そこで行われるのは後者です。
白鵬氏が「私が日本チャンピオンにならないといけない」と言ったのは、この違いを踏まえた発言と読めます。大相撲の元横綱という肩書きは、競技としての相撲の日本代表資格とは直接つながっていません。
なお、相撲が「日本の国技」と呼ばれる根拠については、日本の国技は相撲?法的根拠と「国技」と呼ばれる本当の理由で法律の有無から整理しています。現役力士の顔ぶれは現役力士一覧【2026年最新】で確認できます。
相撲が五輪競技になるまでに残るハードル
残るのは、開催大会の競技プログラムに採用されること、国際的な普及の基盤、開催都市とIOC側の判断の3つです。
ここは制度として固まっていない部分が多いため、確定したチェックリストとしては書けません。公開されている情報から見えている論点を、大きく3つに分けて並べます。
③がいちばん重い関門です。追加競技は開催都市側の提案が起点になるため、相撲がどの都市の大会で提案されうるかという、競技の中身とは別の要素が効いてきます。
41歳の白鵬氏が五輪選手として土俵に立つ可能性は?
相撲が五輪競技になる時期も代表の選び方も決まっておらず、現時点で可能性を見積もれる段階にはありません。
白鵬氏自身が「ハードルが高いです」と述べているとおりです。整理すると、確定していることと未定のことは次のように分かれます。
| 論点 | 現在地(2026年8月時点) |
|---|---|
| 相撲の五輪採用 | 未採用。LA2028の追加5競技にも入っていない |
| 対象となる大会 | 2028年より先。どの大会かは未定 |
| 日本代表の選考方式 | 未定。白鵬氏の「日本チャンピオン」は本人が想定するハードル |
| 白鵬氏の立場 | 国際相撲連盟の顧問(議決権なし)。日本相撲協会には所属していない |
| 年齢 | 41歳。本人が「年齢が年齢」と述べている |
本人が出場するまでに、どの順で何が決まる必要があるのかを図にすると次のようになります。
図解:白鵬氏が五輪の土俵に立つまでに通る順番
五輪競技に採用される→日本代表の
選考方式が決まる→白鵬氏がその選考を
勝ち抜く→五輪出場
※左の2つはまだ何も決まっていない。本人の意欲だけで進む段階ではないという意味で「ハードルが高い」と語られている。
左端が動かないかぎり、右側は議論の対象になりません。今回のニュースの実質は、選手としての復帰計画ではなく、五輪競技化に向けた発信の一環と見るのが妥当です。
白鵬氏の五輪発言に関するよくある質問
Q. 白鵬は大相撲に現役復帰するのですか?
A. しません。白鵬氏は2021年9月に現役を引退し、2025年6月9日付で日本相撲協会を退職しています。今回の「絶対出ます」は、相撲が五輪競技になった場合に選手として出たいという意味です。
Q. 相撲は現在オリンピック競技ですか?
A. いいえ。相撲はオリンピックの競技ではありません。国際相撲連盟がIOCの承認を受けているとされますが、団体としての承認と、大会の競技プログラムに採用されることは別の制度です。
Q. 2028年ロサンゼルス五輪に相撲はありますか?
A. ありません。LA2028の追加5競技は野球・ソフトボール、フラッグフットボール、クリケット、ラクロス、スカッシュで、2023年10月に承認されました。相撲は含まれていません。
Q. 国際相撲連盟と日本相撲協会は別の組織ですか?
A. 別の組織です。日本相撲協会は大相撲の本場所を運営する団体で、国際相撲連盟は競技としての相撲を統括する国際団体です。白鵬氏は前者を退職し、後者の顧問を務めています。
Q. 国際相撲連盟の会長は誰ですか?
A. 2025年9月12日の総会で、トヨタ自動車会長の豊田章男氏が新会長に選ばれました。任期は2年です。白鵬氏と元小結・旭鷲山は顧問、把瑠都氏は理事を務めています。
白鵬氏の「絶対出ます」は、相撲を五輪へ運ぶという30年以上前からの目標に、退職後の自分を賭け金として置いた言葉です。土俵に戻るかどうかより先に決まっていないことが多すぎるので、いま確かなのは、元横綱が協会の外からその旗を掲げ直したという事実のほうになります。
