大相撲名古屋場所は7月22日、IGアリーナで11日目の取組が行われた。この日の主役は関脇・安青錦(あんせいきん、22歳・ウクライナ出身・安治川部屋)である。東前頭2枚目の豪ノ山を寄り切りで下して10勝1敗とし、大関復帰の条件をこの日のうちにクリアした。同時に1敗を守って優勝争いの単独先頭に立ち、終盤戦の主役の座を確かなものにしている。
この記事でわかること
- 安青錦が11日目に10勝目を挙げ、来場所の大関復帰が決まった経緯
- 「翌場所10勝で大関に戻れる」特例規定の中身と、なぜ11日目に確定したのか
- 安青錦-豪ノ山戦で指摘された「まげ」の一件と、尾上審判長の見解
- 優勝争いの構図(1敗=安青錦ひとり、2敗=5人)と残り4日の勝差
- 綱取りの霧島に求められている昇進条件と、12日目の大の里戦の位置づけ
- カド番・琴桜が勝ち越すために必要な残り星
名古屋場所11日目の主な結果
11日目は、上位陣で明暗がはっきり分かれる一日となった。優勝争いに絡む関脇・安青錦が白星を伸ばした一方、横綱・大の里は5敗目を喫している。まずは主な取組の結果を整理しておきたい。
| 力士(番付) | 相手 | 勝敗・決まり手 | 11日目終了時 |
|---|---|---|---|
| 安青錦(関脇) | 豪ノ山 | 勝ち・寄り切り | 10勝1敗 |
| 霧島(大関) | 一山本 | 勝ち・押し出し | 9勝2敗 |
| 豊昇龍(横綱) | 琴勝峰 | 勝ち・上手投げ | 7勝4敗 |
| 琴桜(大関・カド番) | 宇良 | 勝ち・押し倒し | 6勝5敗 |
| 大の里(横綱) | 熱海富士 | 負け・押し出され | 6勝5敗 |
勝った4人のうち、優勝争いに直接絡んでいるのが安青錦と霧島の2人である。以下、この日の焦点だった安青錦の一番から順に見ていく。
安青錦が10勝目、大関復帰が決定
安青錦にとって、この場所は最初から「10勝」という具体的な数字が目標として置かれていた。その数字に11日目で到達したことで、来場所の番付は大関に戻ることが決まった。
豪ノ山を寄り切り、11日目で10勝目に到達
相手は東前頭2枚目の豪ノ山。安青錦は左上手を取ると、出し投げを打ちながら右で相手の頭を押さえて体勢を崩し、最後は寄り切って白星を挙げた。これで10勝1敗となり、単独首位を守っている。
安青錦は場所中に脚の状態を気にする場面も報じられており、万全とは言い切れない状況での到達だった。取組後には「今回は特別」と語り、条件クリアの重みをにじませている。
翌場所10勝で戻れる「特例」とはどんな規定か
大関から陥落した力士には、通常の昇進基準とは別の救済ルートが用意されている。大関の地位で負け越して関脇に落ちた場合、その直後の場所で10勝を挙げれば、番付編成の際に大関へ戻ることができるという規定だ。安青錦はこの条件に該当する立場で今場所を迎えており、11日目の白星がそのまま復帰決定を意味した。
大関特例復帰までの流れ
→ 翌場所は関脇へ陥落
=特例の復帰条件
安青錦は11日目で到達
関脇から通常の昇進を狙う場合は三役で合計33勝前後という長い積み上げが必要になる。11日という短い期間で番付を戻せたのは、この特例があったからこそである。
まげをつかんだように見えたとの指摘と、審判長の見解
この一番については、安青錦が右手で豪ノ山の頭を押さえた場面が「まげをつかんでいるように見えた」との指摘が出た。相撲では、まげをつかむ行為は反則負けの対象となる。
ただし土俵上で物言いはつかず、取組結果は覆っていない。尾上審判長(元小結・浜ノ島)は「そんな感じには見えなかった。それで勝負が決まっているわけでもない。何かあれば、ビデオ室からも言ってくる」と述べ、反則にはあたらないとの見方を示している。豪ノ山自身も敗因を自らの力不足として語っており、抗議の類はなかった。
SNS上では映像の見え方をめぐって賛否が交錯しているが、現時点で確認できるのは「指摘があったこと」「物言いはつかなかったこと」「審判長が否定的な見解を示したこと」までである。反則があったと断定できる材料は示されていない。
優勝争いは安青錦が1敗で単独先頭
11日目を終えて、優勝争いの形はかなり整理された。10日目まで1敗で並走していた琴栄峰が獅司に敗れたため、1敗は安青錦ただ1人となっている。
2敗で追う5人と、首位との勝差
| 星 | 力士 | 成績 | 首位との差 |
|---|---|---|---|
| 1敗 | 安青錦 | 10勝1敗 | - |
| 2敗 | 霧島・琴栄峰・高安・尊富士・獅司 | 9勝2敗 | 1勝差 |
大関から平幕まで顔ぶれが散らばっているのが今場所の特徴で、追う側が5人もいる分、安青錦が1つ落とせば一気に並ばれる可能性がある。
残り4日、安青錦は自力で先頭を守れる立場
11日目終了時点で残りは4日。安青錦は勝ち続ける限り、他の力士の結果を待つ必要がない位置にいる。逆に言えば、2敗勢の5人は自力での逆転が難しく、安青錦の取りこぼしが前提条件になる。単に「混戦」と括るよりも、「首位が自力、追う側は他力」という非対称な構図として見た方が終盤戦は分かりやすい。
霧島は9勝2敗、綱取りの行方
2敗勢の中で最も注目を集めているのが、綱取りに挑む大関・霧島である。11日目は一山本を押し出しで下し、2敗を守った。
昇進条件は「レベルの高い優勝」
霧島は先場所(夏場所)で12勝3敗の優勝同点という成績を残しており、それを受けて審判部は今場所の横綱昇進の条件を「レベルの高い優勝」と示している。単に優勝すればよいというものではなく、内容を伴った優勝が求められる条件付きの綱取りだ。何勝すれば確定という数字が示されているわけではないため、現時点で昇進を既定路線として語ることはできない。
12日目は過去0勝10敗の大の里戦
その霧島が12日目に当たるのが、横綱・大の里である。霧島は大の里に対してこれまで0勝10敗と、一度も勝てていない相手だ。
12日目・霧島-大の里の位置づけ
綱取り継続には星を落とせない/大の里には過去0勝10敗
優勝争いからは後退/横綱としての内容が問われる一番
優勝争いの当事者と、苦手にしてきた横綱との対戦が重なった格好で、結果次第では2敗勢が1人減る。安青錦の首位がどこまで安泰かを測るうえでも、12日目の結びは大きな分岐点になる。
大の里は5敗目、豊昇龍は7勝目
両横綱は対照的な一日となった。大の里は関脇・熱海富士に押し出されて6勝5敗となり、5敗目を喫した。立ち合いで圧力に押され、引く形になったところを一気に運ばれており、内容としても課題が残る敗戦である。優勝争いからは事実上後退し、残り4日は横綱としての相撲内容を立て直せるかが焦点になる。
一方の豊昇龍は関脇・琴勝峰を上手投げで下して7勝4敗とした。土俵際まで持ち込まれる場面もあったが、上手を切らさずに捌き切っており、連敗を止める形で白星をまとめている。両横綱とも優勝争いには絡めない位置だが、勝ち越しを確定させられるかどうかが残り4日のテーマとなる。
カド番・琴桜は6勝5敗、勝ち越しまであと2勝
見落とされがちだが、カド番で今場所を迎えた大関・琴桜の星勘定も終盤の焦点である。11日目は宇良を押し倒しで下して6勝5敗とし、勝ち越しに王手をかけた。
カド番の大関は、その場所で負け越すと関脇に陥落する。残り4番で2勝すれば8勝に到達し、大関の地位を維持できる計算だ。逆に3つ落とすと陥落が現実味を帯びるため、12日目以降の一番一番が重い。安青錦が特例で戻ってくる番付に、琴桜が残れるかどうかという意味でも見どころは多い。
12日目以降の3つの見どころ
残り4日、追いかけるポイントは大きく3つに絞られる。
- 安青錦が1敗を守り切れるか……自力で先頭を守れる位置。復帰決定後にどう相撲を取るかも注目される。
- 霧島-大の里の直接対決……綱取りの試金石であり、優勝争いの人数が変わる一番。
- 琴桜のカド番脱出……残り4番で2勝すれば大関の地位を維持できる。
この3つが決着に向かう過程で、優勝の行方と来場所の番付が同時に見えてくる。
よくある質問
Q. 大関の「特例復帰」とはどんな制度ですか?
A. 大関で負け越して関脇に陥落した力士が、その直後の場所で10勝を挙げた場合に大関へ戻れる規定です。関脇から通常の昇進基準を満たすには三役で長期間の好成績が必要になりますが、この特例では1場所での復帰が可能になります。
Q. 安青錦の大関復帰は確定したのですか?
A. 11日目に10勝目を挙げたことで、条件は満たしています。番付は場所後の番付編成会議で正式に決まりますが、報道でも「大関復帰が決定」と扱われています。
Q. 安青錦はまげをつかんでいたのですか?
A. 映像上そう見えたとの指摘は出ましたが、土俵上で物言いはつかず、尾上審判長も「そんな感じには見えなかった。それで勝負が決まっているわけでもない」と否定的な見解を示しています。反則と判断された事実はありません。
