大相撲で「休場力士」という言葉を耳にしても、休むと番付や成績がどうなるのか、なぜけがでも地位が下がるのかは分かりにくいものです。休場とは、けがや病気などで本場所の取組を欠場することを指し、休んだ日は「不戦敗」として負けに数えられます。この記事では、休場の基本ルールから番付への影響、横綱・大関の特例、かつて存在した「公傷制度」、そして名古屋場所2026(七月場所)で休場している力士の現況までを、日本相撲協会の公式情報をもとに整理します。
📖 この記事でわかること
- 休場力士とは何か——休場・欠場・不戦敗の意味と基本ルール
- 休場すると番付や成績がどうなるのか(けがでも原則は負け扱い)
- 横綱・大関の休場に関わる地位別の特例(カド番・陥落・引退)
- かつてあった「公傷制度」の内容と、廃止された理由
- 名古屋場所2026で休場している主な力士の現況
休場力士とは?意味と基本ルールを解説
休場力士とは、けがや病気などで本場所の取組を欠場する力士のことです。休んだ日は不戦敗として負けに数えられ、原則として次の番付は下がります。現在は、負傷による休場であっても番付を特別に守る制度はなく、横綱・大関には地位に応じた特例が設けられています。
本場所は15日間にわたって行われ、力士は原則として毎日1番の取組に臨みます。その途中で出場できなくなることを「休場」と呼びます。初日から出ない「初日から全休」もあれば、場所の途中でけがをして残りを休む「途中休場」もあります。いずれの場合も、出場しなかった日は勝敗の記録上「負け」として扱われるのが大相撲の原則です。
Q. 休場と「不戦敗」はどう違うのですか?
A. 休場は「力士が本場所を欠場すること」という状態を指し、不戦敗は「取組を行わずに記録される1敗」という結果を指します。ある力士が休場すると、その日の取組は不戦敗として本人に1敗がつき、対戦相手には不戦勝として1勝がつきます。休場が原因で不戦敗という結果が生まれる、という関係です。
名古屋場所2026の休場力士【今場所の現況】
「今場所は誰が休んでいるのか」は、多くのファンが最初に知りたい情報でしょう。ここでは名古屋場所2026(七月場所)で休場している主な力士を、日本相撲協会公式サイトの「休場力士情報」をもとにまとめます。下表は九日目時点の状況で、その後に復帰・追加が生じる場合があります。最新の状況は協会公式の情報をご確認ください。
| 四股名 | 番付 | 休場開始 | 主な理由(報道・公式) |
|---|---|---|---|
| 若隆景 | 東関脇 | 初日から | 左太もものけが(師匠が左太もものコンパートメント症候群と説明・手術) |
| 欧勝海 | 西十両五枚目 | 五日目から | 腓骨骨折(報道では再出場せず幕下転落が濃厚) |
| 白鷹山 | 西十両十三枚目 | 初日から | けがによる休場 |
とりわけ注目されたのが、東関脇・若隆景の休場です。若隆景は先場所を12勝3敗で制し、優勝決定戦を勝ち抜いて賜杯を手にしたばかりでした。その好調の直後、名古屋場所を初日から全休する事態となり、番付上位の一角が欠ける場所となっています。師匠は左太もものコンパートメント症候群と説明し、7月1日に緊急手術を受けたと報じられていますが、復帰時期など詳細は公式の続報を待つ段階です。
十両では、欧勝海が四日目の取組で負傷し、腓骨骨折のため五日目から休場しました。十両の力士が場所の大半を休むと番付への影響は大きく、報道では幕下への転落が濃厚とされています。休場が地位に直結する一例です。名古屋場所2026の個別の休場については、豊昇龍の休場に関する記事や安青錦の休場に関する記事も参考になります。
力士が休場する主な理由
力士が休場する理由は、多くがけがです。相撲は自分より重い相手と真正面からぶつかり合う競技であり、ひざ・足首・肩・首などへの負担が大きく、慢性的な故障を抱えながら土俵に上がる力士も少なくありません。主な休場理由は次のように整理できます。
- けが(負傷):取組中の受傷や慢性故障の悪化。最も多い理由です
- 病気:発熱・内臓疾患・感染症など。近年は感染症対策で休場した例もあります
- 謹慎・処分:不祥事に関する自宅謹慎や出場停止などによる欠場
- その他:親族の不幸や、力士自身の判断による欠場など
けがによる休場は、力士本人にとって苦渋の決断です。土俵に上がりたい気持ちと、無理を押して悪化させる危険との間で、多くの力士が葛藤します。休場は「逃げ」ではなく、長い相撲人生を続けるための治療の一過程でもあります。
Q. 休場するには診断書が必要ですか?
A. けがや病気を理由に休場する場合、力士は医師の診断書を添えて日本相撲協会に休場を届け出るのが通例とされます。診断書は休場の正当な理由を示す書類として扱われます。具体的な提出の様子は[安青錦の休場を伝える記事](https://ozumo.jp/aonishiki-kyujo-natsu2026/)でも触れています。
休場すると番付・成績はどうなる?
休場した日は不戦敗として1敗が記録されます。全休すれば0勝15敗、途中から休めばそれまでの成績に休んだ日数分の黒星が加わります。番付は各場所の成績をもとに編成されるため、負け越しが大きいほど番付は下がります。けがによる休場であっても、この扱いは基本的に変わりません。
図解:休場が番付に及ぶ流れ
※横綱・大関は地位に応じた特例があり、この流れとは扱いが異なります。
番付がどのように決まるのかをより詳しく知りたい方は、大相撲の番付予想のやり方を解説した記事もあわせてご覧ください。勝ち越し・負け越しが番付にどう反映されるかがつかめます。
Q. 何番休むと負け越しになりますか?
A. 本場所は15日間で行われ、8敗すると負け越しが決まります。したがって、途中休場でも休んだ日数と既についている黒星の合計が8に達した時点で負け越しが確定します。全休の場合は0勝15敗となり、大きく番付を下げる要因になります。
横綱・大関の休場は特別扱い?地位別のルール
番付が下がる原則には、地位ごとの例外があります。とくに横綱と大関は扱いが大きく異なります。下表で地位別の休場の扱いを整理します。
| 地位 | 休場・負け越し時の扱い |
|---|---|
| 横綱 | 負け越しても番付は下がらない。休場が続き地位にふさわしい力量を欠くと判断されれば、引退という道になる |
| 大関 | 1場所の負け越しでは陥落せず「カド番」となる。翌場所も負け越す(休場を含む)と関脇へ陥落する |
| 関脇以下 | 負け越すと原則として番付が下がる。休場による黒星も同様に反映される |
横綱は、番付がそれ以上下がることのない唯一の地位です。そのため休場を重ねても関脇や小結へ落ちることはありませんが、代わりに「その地位にふさわしい力量」が問われ続けます。力量を欠くと判断されれば、下がるのではなく引退という重い選択に向かうのが横綱の宿命です。
大関には「カド番」という仕組みがあります。大関が1場所負け越すと、次の場所は「負け越せば関脇に陥落する」という条件付きの場所となり、これをカド番と呼びます。カド番の場所で再び負け越す(休場して8敗に達する場合を含む)と、関脇への陥落が決まります。ただし陥落した力士には特例があり、陥落した直後の1場所で10勝以上(15日制の取組日数の3分の2以上)を挙げれば、大関に復帰できます。休場が大関の地位を左右した実例としては、安青錦の大関陥落の経緯を伝える記事が参考になります。
Q. 横綱が休場したら陥落しますか?
A. 横綱は番付が下がらない地位のため、休場や負け越しを理由に大関以下へ陥落することはありません。ただし、休場が重なり横綱としての力量を保てないと判断された場合は、引退が求められることになります。番付が守られる代わりに、引退という一段と重い基準が課されているといえます。
かつてあった「公傷制度」とは
現在はけがで休場しても番付は守られませんが、かつては負傷した力士を一定程度救済する「公傷制度」がありました。公傷制度とは、本場所の取組で生じたけがによる休場について、次の場所は休んでも、そのさらに次の場所で同じ地位に留まれるようにした制度です。1回のけがにつき1場所の全休が認められました。横綱は対象外でした。
公傷制度は昭和47年(1972年)1月場所から施行され、平成16年(2004年)1月場所から廃止されました。廃止は平成15年(2003年)9月場所後に決まっています。廃止の背景には、明らかな仮病やずる休みと疑われる休場まで増え、制度が悪用されるようになったことがあると説明されています。当時の理事長は「原点に返るということ。力士は一層厳しく自己管理に努めてほしい」と述べたと伝えられています。
なお、若隆景ら実力者の負傷休場が続くたびに、ファンの間からは「公傷制度の復活を」という声も上がります。一方で、過去に不正な利用があったために廃止された経緯や、番付は自らの相撲で上げていくものだという見方もあり、制度をめぐる議論には賛否があります。ここでは事実として、現在は負傷休場を救済する制度が存在しないことを確認しておきます。
Q. 公傷制度はなぜ廃止されたのですか?
A. 負傷を理由とする休場が増え、なかには仮病やずる休みと疑われる例もあり、制度が本来の趣旨から外れて使われるようになったことが主な理由とされます。日本相撲協会は「原点に返る」という考えのもと、2004年1月場所から公傷制度を廃止しました。
休場力士に関するよくある質問
Q. 休場中の力士に給料は支払われますか?
A. 月給(力士報酬)は十両以上の関取に番付に応じて支給される固定給で、目安として横綱300万円・大関250万円・関脇小結180万円・平幕140万円・十両110万円とされます。固定給のため、休場したからといってその月の月給がなくなるわけではありません。ただし勝ち越しで積み上がる力士褒賞金(持ち給金)は休場・負け越しでは増えません。幕下以下には月給がなく、本場所ごとの手当が中心です。
Q. 休場した力士の懸賞金はどうなりますか?
A. 懸賞金は取組に勝った力士が受け取るものです。休場して取組が行われなければ、その一番に懸賞は懸けられず、本人が懸賞金を得ることもありません。人気力士の休場は、懸賞の動きにも影響することがあります。
Q. 途中休場した力士は同じ場所に再出場できますか?
A. 医師の許可などの条件が整えば、途中休場した力士が同じ場所の後半に再出場することもあります。実際に、下位の番付では途中休場から再出場するケースが見られます。ただし重いけがの場合は、再出場せずそのまま全休扱いとなることが一般的です。
まとめ
休場力士とは、けがや病気で本場所を欠場する力士のことです。休んだ日は不戦敗として負けに数えられ、原則として番付は下がります。横綱は番付こそ守られるものの引退という重い基準が課され、大関はカド番・陥落・特例復帰という独自の仕組みの中に置かれます。かつての公傷制度は廃止され、今は負傷でも番付が守られない厳しさが、大相撲という世界を貫いています。相撲の番付や地位の仕組みをさらに知りたい方は、大相撲の楽しみ方・視聴方法をまとめたガイドや番付予想の記事もご覧ください。
土俵に上がれない力士の休場には、けがの無念と、番付という秩序の非情さが同居しています。それでも多くのファンが、休場した力士に向けるのは非難ではなく、「治してまた戻ってきてほしい」という静かな祈りです。番付は勝ち負けで容赦なく動きますが、その厳しさの向こうには、再び土俵へ戻る日を待つ人々の想いがあります。休場という一語の背後にある力士の歩みに、そっと目を向けたいものです。
