令和8年名古屋場所は7月26日、愛知・IGアリーナで千秋楽を迎えました。本割で西関脇・安青錦が東関脇・熱海富士に押し出しで敗れ、東大関・霧島も白星をあげたことで、3人が12勝3敗で並ぶ展開に。優勝の行方は3人による優勝決定巴戦に持ち込まれました。
制したのは安青錦でした。巴戦で熱海富士、霧島を続けて破り、3場所ぶり3度目の幕内優勝。しかもこの場所は、大関から関脇に陥落した直後の「特例復帰」を決めた場所でもありました。報道によれば、特例復帰を果たした場所での優勝は史上初とされています。
この記事でわかること
- 千秋楽の本割で何が起き、なぜ3人が12勝3敗で並んだのか
- 優勝決定巴戦のルールと、今回の3番がどう進んだのか
- 「大関特例復帰」という制度の中身と、安青錦の優勝が史上初とされる理由
- 左足を痛めながら千秋楽に3番取った安青錦の場所中の経過
- 三賞受賞者、熱海富士・霧島・両横綱の最終成績と十両優勝
千秋楽ダイジェスト|12勝3敗で3人が並んだ波乱の結末
14日目を終えた時点で単独首位に立っていたのは安青錦でした。千秋楽を白星で締めれば、その場で優勝が決まる位置です。しかし土俵の上では、そのとおりには運びませんでした。
本割:熱海富士が安青錦を押し出しで破る
結びの一番手前で組まれた関脇同士の対戦は、熱海富士が押し出しで安青錦を退けました。報道によれば、低く当たってきた安青錦を受け止め、相手が引いたところを一気に押し込んだ形です。この一番で熱海富士は12勝3敗とし、優勝争いに踏みとどまりました。
本割:霧島が琴櫻との大関対決を制する
大関対決となった霧島と琴櫻の一番は、霧島が寄り切りで勝ちました。この白星で霧島も12勝3敗。安青錦、熱海富士と合わせて3人が並び、優勝決定戦は3人による巴戦となりました。
下の表は、優勝を争った3人の千秋楽の内容を整理したものです。
| 力士(番付) | 本割の相手・結果 | 巴戦 | 最終成績 |
|---|---|---|---|
| 安青錦(西関脇) | 熱海富士に敗れる(押し出し) | 熱海富士、霧島に連勝して優勝 | 12勝3敗・優勝 |
| 熱海富士(東関脇) | 安青錦に勝ち(押し出し) | 霧島に勝ち、安青錦に敗れる | 12勝3敗 |
| 霧島(東大関) | 琴櫻に勝ち(寄り切り) | 熱海富士、安青錦に敗れる | 12勝3敗 |
本割で優勝争いの相手に敗れた力士が、決定戦で賜杯を抱く。千秋楽らしい起伏のある一日になりました。
優勝決定巴戦の仕組みと、今回の3番の流れ
幕内優勝を同じ成績の3人で争うことになったとき、大相撲では「巴戦(ともえせん)」という方式で決着をつけます。年に何度も見られるものではないため、ルールを整理しておきます。
巴戦のルール|なぜ「2連勝」が必要なのか
巴戦では、まず抽選で最初に取る2人が決まり、残る1人は控えで待ちます。最初の一番の勝者が、控えていた力士とすぐに対戦します。以後は勝った力士が土俵に残り、敗れた力士が控えに下がる形で繰り返されます。
優勝の条件は2連勝です。全員が土俵に上がる機会を等しく持たせつつ、連勝という条件で決着を早める仕組みで、勝ち続けている力士ほど連続して相撲を取ることになります。
今回の3番|安青錦が寄り切りで賜杯をつかむ
今回の巴戦は、次のように進みました。
熱海富士 ○ - ● 霧島
熱海富士が勝ち、優勝に王手
安青錦 ○ - ● 熱海富士
本割の借りを返し、連勝への足がかり
安青錦 ○ - ● 霧島(寄り切り)
2連勝で優勝が決定
先に王手をかけたのは熱海富士でした。しかし2番目で安青錦が本割の借りを返し、続く霧島戦を寄り切りで制して、そのまま2連勝。安青錦は本割と合わせ、千秋楽に3番取ったことになります。
過去7例で「ゼロ」だった快挙|大関特例復帰と優勝の同時達成
この優勝がなぜ大きく報じられているのか。理由は、安青錦がこの場所で「大関特例復帰」を決めていたからです。
大関特例復帰とは|陥落した直後の1場所に限った措置
大関は、負け越しが2場所続くと関脇に陥落します。ただし、陥落した直後の1場所に限り、関脇の地位で10勝以上を挙げれば、翌場所に大関へ戻れるという措置があります。これが特例復帰です。1969年以降のルールとされています。
ここで誤解されやすいのが、「陥落したあとならいつでも10勝すれば戻れる」という読み方です。適用されるのは陥落直後の1場所だけで、そこを逃せば通常の大関昇進と同じ手順を踏むことになります。1場所しか猶予がない、かなり厳しい条件です。
過去7例(6人)に、復帰場所での優勝はなかった
安青錦は11日目に10勝目に到達し、この時点で大関復帰を確定させていました。報道によれば、特例措置による大関復帰は安青錦で7人目・8例目にあたり、過去には貴ノ浪、武双山、栃東らが同じ形で大関に戻っています。
そして、特例復帰を決めた場所で優勝した例は、過去7例(6人)の中に無かったと報じられています。日本相撲協会の優勝者一覧そのものにこの記録の注記はないため、あくまで報道各社の説明に基づく記録です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用の条件 | 大関から陥落した直後の1場所で、関脇として10勝以上 |
| 安青錦の到達 | 11日目に10勝目、大関復帰が確定 |
| 特例復帰の人数 | 安青錦で7人目・8例目(貴ノ浪、武双山、栃東ら) |
| 復帰場所での優勝 | 過去7例(6人)には無く、今回が初とされる |
満身創痍の復活劇|8日目の負傷から千秋楽の3番へ
この12勝3敗は、万全の体調で積み上げたものではありませんでした。
8日目の負傷と、師匠が休場も考えた状況
報道によれば、安青錦は8日目に左足の親指を痛めています。師匠が出場を止めることも考えたと伝えられる状態で、そこから終盤戦を戦い抜きました。けがの程度や治療の内容は本人・師匠の発言に基づく報道の範囲であり、診断名までは確認できていません。
千秋楽に本割+巴戦2番、計3番を取り切った
千秋楽は、本割で1番、巴戦で2番。足に不安を抱えた力士にとって、1日に3番取ることの負担は小さくありません。優勝インタビューでの「やり切ったなという感じです」という言葉が、そのまま15日間を言い表していました。
左足親指を痛める
10勝目、大関特例復帰が確定
単独首位で千秋楽へ
本割で敗れるも巴戦を連勝、優勝
三賞と主要力士の明暗|熱海富士の涙、霧島の綱取り、横綱陣の課題
三賞|殊勲賞・藤ノ川、敢闘賞・熱海富士ら
三賞は、殊勲賞が藤ノ川、敢闘賞が熱海富士・琴栄峰・高安、技能賞が安青錦でした。藤ノ川は両横綱を破っての初受賞。熱海富士は4度目の敢闘賞、高安は7度目の敢闘賞で、通算の三賞受賞数を積み上げました。安青錦は技能賞4度目です。
| 賞・区分 | 力士 | 備考 |
|---|---|---|
| 幕内優勝 | 安青錦(12勝3敗) | 3場所ぶり3度目 |
| 殊勲賞 | 藤ノ川 | 初受賞・両横綱を破る |
| 敢闘賞 | 熱海富士/琴栄峰/高安 | 熱海富士4度目、琴栄峰は初、高安7度目 |
| 技能賞 | 安青錦 | 4度目 |
| 十両優勝 | 昭南乃海(11勝4敗) | 高田川部屋 |
熱海富士と霧島|届かなかった12勝3敗
熱海富士は、優勝争いの直接の相手を本割で下しながら、巴戦で賜杯を逃しました。優勝決定戦に進むのはこれが3度目で、初優勝はまたも持ち越しとなりました。報道によれば、支度部屋では悔しさをあらわにし、報道陣への対応は控えたと伝えられています。
それでも今場所は両横綱を破り、自己最多となる12勝。敢闘賞も受け、審判部長が秋場所での大関取りに言及したと報じられています。関脇で残した内容は、次の場所につながるものでした。
霧島も12勝3敗。大関としての責任を果たす成績を残しました。優勝を逃したことで、横綱昇進をめぐる話は来場所以降に持ち越されます。昇進の可否は場所後の審議に委ねられるため、現時点で結論を先取りはできませんが、優勝争いに最後まで加わった事実は評価の材料になるとみられます。
横綱陣|大の里は9勝6敗、豊昇龍は休場
横綱・大の里は千秋楽に琴勝峰を押し倒しで破り、9勝6敗で場所を終えました。横綱・豊昇龍は14日目から休場しています。両横綱がそろって優勝争いに絡めなかったことは、この場所を語るうえで避けて通れない点です。
場所を振り返って|次の場所へ
IGアリーナで行われた令和8年名古屋場所は、関脇2人と大関1人が12勝3敗で並び、巴戦にもつれ込む形で幕を閉じました。X上の反応を見ると、けがを抱えながらの優勝という点に称賛が集まる一方、両横綱の不在感を惜しむ声も一定数あり、巴戦という決着そのものは好意的に受け止められていた印象です。ただしこれらはあくまでオンライン上の反応であり、確定した評価ではありません。
安青錦は大関として、熱海富士は12勝を挙げた関脇として、霧島は横綱を目指す大関として、それぞれ次の場所を迎えます。復帰の場所を賜杯で締めくくった力士が、大関の地位でどんな相撲を見せるのか。土俵は次の15日間へ続きます。
よくある質問
Q. 大相撲の「巴戦」とはどんなルールですか。
A. 同じ成績の3人で優勝を争うときの決定方式です。抽選で最初に取る2人を決め、勝った力士が控えの力士と続けて対戦します。2連勝した力士が優勝で、決着がつくまで繰り返されます。
Q. 「大関特例復帰」とはどんな制度ですか。
A. 大関から関脇に陥落した直後の1場所に限り、関脇として10勝以上を挙げれば翌場所に大関へ戻れる措置です。適用は1場所だけで、逃せば通常の昇進手順に戻ります。
Q. 特例復帰の場所で優勝した力士は過去にいますか。
A. 報道によれば、過去7例(6人)の特例復帰の中に、その場所で幕内優勝した例はありません。今回の安青錦が初とされています。
Q. 安青錦はどこの出身で、優勝は何回目ですか。
A. ウクライナ・ヴィーンヌィツャ出身、安治川部屋所属の22歳です。今回で3場所ぶり3度目の幕内優勝となりました。
Q. 千秋楽に1人が何番取ることがありますか。
A. 本割の1番に加え、巴戦では決着がつくまで取組が続きます。今回、安青錦は本割1番と巴戦2番の計3番を取って優勝を決めました。
