大阪場所(春場所)のNHK中継を見ていると、土俵のすぐそばに茶色いちゃんちゃんこを着た人々がずらりと並んでいます。あの集団が「東西会」です。東西会とは、昭和12年(1937年)に発足した大阪地区の団体維持員組織で、日本相撲協会の事業を支援し、相撲道の奨励・振興をはかることを目的とする団体です。茶色いちゃんちゃんこを着用して溜席に陣取る姿から、大阪場所の名物的存在として知られています。
東西会とは――大阪場所を支える「維持員」組織
東西会は、大阪地区の「団体維持員」として日本相撲協会に登録された組織です。
大相撲の本場所が開催される東京・大阪・名古屋・福岡の各地区には、それぞれ「維持員会」が設置されています。東京・名古屋・福岡では「溜会(たまりかい)」と呼ばれますが、大阪のみ「東西会」という名称を使用します。いずれも、相撲協会へ「維持費(寄付金)」を納めることで維持員の資格を得た個人・団体で構成される組織です。
維持員制度における維持員の位置づけは、単なる観戦者ではなく、本場所において力士の技能審査をする「立会人」とされています。相撲の運営を財政面・後援面から支える重要な存在として、溜席での観戦権が与えられています。
維持員には「普通維持員」「特別維持員」「団体維持員」の3種類があります(日本相撲協会公式サイトより)。東西会は団体維持員にあたり、チケットが個人単位ではなく事務局に一括送付される仕組みをとっている点が他の地区と異なる大きな特徴です。
以下のよくある疑問にもお答えします。
Q. 東西会とはどんな団体ですか?
A. 昭和12年(1937年)に発足した大阪場所の団体維持員組織です。相撲協会へ維持費を納めることで溜席の観戦権を得ており、茶色いちゃんちゃんこの着用が特徴です。東京・名古屋・福岡の「溜会」に相当する大阪版の組織です。
東西会の公式サイトには設立趣旨として「財団法人日本相撲協会の事業に協力し、相撲道の奨励・振興をはかると共に相撲道を通じて社会道義の昂揚と社会福祉に寄与することを目的として設立されました」と明記されています(東西会公式サイトより)。
茶色いちゃんちゃんこの意味と観覧規定
茶色いちゃんちゃんこは、東西会の会員証明であり、東西会のみが着用する固有の装束です。
着席前に会場内の東西会事務所で「場所衣」と呼ばれる茶色いちゃんちゃんこを着用し、スリッパに履き替えてから入席するのが決まりです。一般の観客とは明らかに異なるこの装いには、相撲界を支える矜持と伝統が込められています。
東西会の観覧規定は厳格で、公式サイトに以下が明記されています(東西会公式サイトより)。
以下に観覧規定の主な項目をまとめました。
規定に違反した場合、他の会員から苦情が入り、繰り返しのマナー違反には注意や除名の処分が行われることもあります。X(旧Twitter)上でも、溜席でのスマートフォン撮影を指摘するファンの声が継続的に見られます。
観覧は会員本人に限られ、子どもの同伴も認められていません。やむを得ない事由による代理人出席の場合は、当該会員から代理人へ事前に規定を周知し、場内では事務局員の指示に従わせる必要があります(東西会公式サイトより)。
維持員席(溜席)とはどんな席か
維持員席は、土俵に最も近い「溜席(砂かぶり席)」に設けられた、維持員専用の観覧席です。
一般のチケット販売には含まれない特別な席で、維持員の資格を持つ者のみが利用できます。大阪地区では300席が維持員席として割り当てられており、残りが一般販売に回されます(NEWS POST SEVEN 2025年3月より)。
土俵至近のため力士や行司が転落することもあり、飲食・携帯電話の使用・撮影などが厳禁とされています。砂かぶり席という名の通り、土俵の砂が飛んでくることもある席であるため、以下のような制約が設けられています。
よく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 維持員席(溜席)ではなぜ飲食が禁止なのですか?
A. 土俵至近のため力士や行司が転落する危険性があること、および国技の観戦者として一般観客の模範となる態度が求められるためです。飲食・撮影・喫煙・雑談はすべて規定で禁止されています。
Q. 維持員席は一般購入できますか?
A. 維持員席(溜席)は一般には販売されません。維持員になる手続きを経た個人・団体のみが利用できる特別な席です。一般の方が入場できるのは、維持員席以外の席種のみとなります。
なお、団体維持員である東西会の場合、チケットは個人ではなく東西会事務局に一括送付されます。会員間でどのように配分するかは東西会内部の取り決めによるため、大阪場所の溜席では毎日異なる人が座っているように見えることもあります。
東西会への入会方法と維持費
東西会への入会は、日本相撲協会への維持費(寄付金)の納付を通じて行います。
大阪・名古屋・福岡地区の維持費は3年間で1,125,000円(一括納付)です(日本相撲協会公式サイトより)。この金額は1場所年1回の開催地区に適用されるもので、東京地区(年3場所)の405万円(3年分)とは金額が異なります。
入会にあたっては維持員会の承認審査があり、個人・法人いずれも対象となります。維持費は相撲協会への寄付として一時金で納められ、原則として一括納入となります。
Q. 東西会の会費はいくらですか?
A. 維持費として3年間で1,125,000円を相撲協会に一括で寄付する必要があります(日本相撲協会公式サイトより)。東西会は大阪地区の団体維持員のため、同地区の維持費が適用されます。
高額な維持費を背景に、X(旧Twitter)上では「関西の財界の名刺代わり」「会員費を何席分も払って自分は見に行かない金持ちもいる」といった声も見られます。
東西会の歴史と活動内容
東西会は、昭和12年(1937年)3月に発足した89年の歴史を持つ組織です。
大阪場所が定着・発展してきた歴史とともに歩み、長年にわたり相撲協会を支援してきました。主な活動内容は以下のとおりです(東西会公式サイトより)。
- 大阪本場所に会員が連日観覧する
- 本場所において成績優秀な力士に賞を贈呈する
- 大阪本場所ごとに郷土出身の下位力士の奨励会を開催する
- 学生相撲および社会人相撲を後援する
- 社会福祉に寄与する事業に参画・協力する
また、大阪場所で弓取り式を行う力士が締める化粧まわしを寄贈しているのも東西会の活動の一つです。弓取り式とは、本場所の最後の取組後に行われる儀式で、大阪場所では東西会からの寄贈品がその場で使われています。
東西会には独自の「会歌」も存在します。難波・天満・天王寺などの大阪名所を盛り込んだ歌詞が続き、最後に「所は難波の体育館 しのぎをけずる大相撲 国技を守る陣羽織 つけた其の名も東西会よ」と締めくくられます(東西会公式サイトより)。
各地区の維持員会との比較――溜会と東西会
東西会は大阪のみの呼称で、他の3地区の維持員会は「溜会」と呼ばれます。
本場所が開催される4地区それぞれに維持員会が存在しますが、その仕組みは地区によって若干異なります。以下の表で各地区を比較してみましょう。
| 地区 | 維持員会の名称 | 場所数(年間) | 維持費(3年分) | 維持員席数 |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 溜会 | 3場所(1月・5月・9月) | 405万円 | 300席 |
| 大阪 | 東西会 | 1場所(3月) | 112.5万円 | 300席 |
| 名古屋 | 溜会 | 1場所(7月) | 112.5万円 | 300席 |
| 福岡 | 溜会 | 1場所(11月) | 112.5万円 | 250席 |
維持費・席数はNEWS POST SEVEN(2025年3月)および日本相撲協会公式サイトをもとに作成。
東西会が他地区と大きく異なるのは「団体維持員」という形態をとっている点です。東京・名古屋・福岡では普通維持員が個人単位でチケットを受け取るのに対し、大阪の東西会は90人分のチケットが事務局に一括送付され、会員間で配分されます(NEWS POST SEVEN 2025年3月より)。
Q. 東西会は東京の溜会とどう違いますか?
A. 活動地区が異なるだけで役割は同じです。東京・名古屋・福岡は「溜会」、大阪のみ「東西会」と呼ばれます。大阪場所は団体維持員としてチケットが一括送付される点が特徴で、他地区は個人単位でのチケット配布が基本です。
このチケット配分の仕組みが、2025年に会員2名の除名処分と提訴という出来事につながりました。溜席の割り当てをめぐる不満が会員間で広がり、除名された会員が日本相撲協会と東西会を相手に大阪地裁に地位確認を求めて提訴しています(日本経済新聞 2025年6月より)。
まとめ
東西会は昭和12年に発足した大阪場所の団体維持員組織で、日本相撲協会への維持費の寄付を通じて相撲文化を支えています。茶色いちゃんちゃんこに身を包み、厳格な観覧規定のもと土俵最前列で取組を見守る姿は、大阪場所ならではの風物詩です。一般には流通しない溜席での観覧権は、相撲を支え続けてきた人々に与えられる特別な場所といえます。
